2018年11月5日、南海トラフ巨大地震を想定した大規模な防災訓練「津波一斉避難訓練」が兵庫県で行われました。この訓練は、県内の皆さんにエリアメール、緊急速報メール、Yahoo!防災速報アプリの通知などにより、災害情報を一斉に伝達するものです。
5日の午前10時過ぎ、兵庫県でスマホの緊急速報の訓練用アラームが鳴り響きました。
三宮駅前では、足を止めてスマホを確認する人の姿も。訓練終了のアナウンスを聞き「訓練だったんだ、よかった」という子どもの声も聞こえてきました。
会社や、学校などで避難訓練を経験したことがある人は、自宅周辺、生活圏内の避難場所を想像できると思います。しかし、出張先や旅行先など、初めて訪れた場所で「避難場所」を想像することが、同じようにできるでしょうか? いつもと同じ行動が取れるでしょうか?
災害状況や今いる場所によって、逃げる場所は違う
Yahoo!天気・災害サービスの防災プロジェクトマネージャーである竹内は「2011年3月に発生した東日本大震災では、まだ、津波や地震といった災害ごとに避難場所が指定されておらず、避難場所に逃れたものの、その施設に津波が襲来するという事象も起きてしまったとのことです」と語ります。
災害によって、適切な避難場所が違うのですが、約6割の方が違いを理解していないことが課題となっています。
株式会社マクロミルが2018年2月5日に行った調査(※1)によると、「避難場所」と「避難所」の役割の違いを理解している方は4割弱でした。
※1 出典:災害や防災に関する定点調査(2018年2月実施)
まず「避難場所」と「避難所」の役割の違いを整理してみましょう。
「避難場所」と「避難所」の違いは、災害対策基本法(※2)に明記されています。2013年に改正された災害対策基本法により、「切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難場 所」と「一定期間滞在し、避難者の生活環境を確保するための避難所」が明確に区別(※3)されました。
※2 災害対策基本法
※3 「緊急避難場所」と「避難所」について(PDF)(滋賀県 土木防災情報システムより)
「避難場所」は災害発生時、危険から逃れるためにまず避難する場所であり、洪水や津波などの種類ごとに安全性などの一定の基準を満たしています。
「避難所」は避難した住民、家に戻れなくなった住民が一定期間生活をする場所です。
災害時にまず移動するところは「避難場所」であり、災害の脅威がおさまったら「避難所」に移動という流れになります。
災害によって異なる避難場所「神戸市三宮駅周辺」
「避難場所マップ」でお住まいの地域(市区町村)を検索すると、災害にあわせた 適切な避難場所がアイコンで表示されます。下記の地図を比較すると、津波と火災では、避難場所アイコンの表示位置が異なっていることがわかります。
三ノ宮駅周辺の地図を調べてみると、「津波発生時」の避難場所に指定されている場所は、地図の北側に多く分布していますが、「火災発生時」になると生田川の南側にも分布していることがわかります。「災害の種類が変わると避難場所も変わる」ことを知っておく必要があります。自宅周辺の避難場所を知っている方は多いかもしれませんが、たまにしか訪れない地域の避難場所についても、事前に把握しておくことが大切です。
神戸市の繁華街「三宮」にいたら? 避難場所は?
今回、三宮駅から徒歩10分前後で行ける避難場所にいくつか行ってみました。
どこも、あらかじめ「避難場所」だとわかっていなければ、その場所に初めて来た人にとっては避難先としてはなかなかイメージできないのではないかと感じました。
各避難場所の案内には、近くのほかの避難場所がわかる地図、「避難所」の説明も表示されていました。
Yahoo!防災速報アプリだと住所を入力する必要がない
Yahoo!防災速報では、場所を入力する必要はなく、アプリを立ち上げるだけで、GPSで今いる場所の災害情報を表示します。
※本機能を利用する場合、「設定」から「位置情報サービスの利用を許可」にする必要があります
3分でできる防災訓練 Yahoo!防災速報の「訓練モード」
今回、Yahoo!防災速報アプリでは、緊急地震速報や避難所の開設といった災害情報の発信に加え、新しく「訓練モード」の機能を追加しました。地震や津波といった災害時に取るべき行動をアプリの「訓練モード」で確認でき、災害時に役立つ知識を身につけることができます。
Yahoo!天気・災害サービスの防災プロジェクトマネージャーの竹内、開発担当の梶木に、今回新しく追加した「訓練モード」について聞きました。
- 訓練モードを実装した経緯を教えてください
竹内:
大規模な地震と津波が発生した場合の知識を身につけてもらい、ご自身が逃げるべき避難場所を確認していただく目的で実装しました。よりたくさんの方に使われたいという思いから、南海トラフ巨大地震を想定した内容になっています。
今回は避難場所の確認までですが、今後は避難場所を登録してもらうなどの機能を追加したいと考えています。
Yahoo!防災速報の開発メンバーが大阪にいることもあり、大阪府からお声がけをいただいて、1年くらい災害情報をいかに広く伝えていくかなどについて意見交換をしていました。
「訓練モード」は「緊急地震速報が通知された想定」と「大津波警報が発表された想定」の2つに分かれています。想定される時系列の出来事に沿って、デザイナーに画像を構成してもらったものを、大阪府の危機管理室 災害対策課の方に確認していただき、改善しました。「訓練モード」の内容については、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター宇田川真之 特任 助教に監修していただいています。
梶木:
大阪府さんからは、最初の画面案ができたときに「クイズや選択形式などにして、ユーザーに問いかけながらやったほうがいいのでは?」というご提案をいただき、選択形式の画面を追加しました。 特に「避難場所」と「避難所」の違いについてまだ知らない、それほど防災意識が高くない方にも伝わるよう、わかりやすい表現を心がけました。
今回は地震と津波の発生時の行動となっていますが、最近では水害も多いので、今後はそのあたりもカバーしていければと思っています。
- 訓練モードの今後の展望をおしえてください
竹内:
今後は、リアルな場でも「訓練モード」で訓練する機会をつくって、ユーザーに参加いただけたらと思っています。一緒に取り組んでいただける自治体とも関係を密にしていきたいですね。
今回ご提供した「訓練モード」が、災害の種類によって、逃げる場所や避難行動が違うことを、 みなさんに知っていただくきっかけになればと願っています。
【関連情報:災害による避難場所の違い】
※自治体から提供を受けた情報や国土地理院「指定緊急避難場所データ」をもとに、ファーストメディア株式会社が作成した避難場所情報を掲載しています。避難場所に関する情報は全国で随時更新されています。最新の情報は、自治体の公式サイトなどでもご確認ください。