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2016.11.15

「見えないモノを見たことのないモノでビジュアライズ」(Hack Day メディアアート賞編)

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7月に開催したHack Dayでは、最優秀賞、投票で選ばれるHappy Hacking(社内限定・公開)賞、技術賞、UX賞、課題解決賞、メディアアート賞の7つの賞が各チームに送られました。

今回は、メディアアート賞を受賞したチームのメンバーに話を聞きました。参加チームの中で最多人数だったという、11人のうち内々定者を除く8人全員が集合。
11人もいると、意見が違った時など大変だったのでは……? と思ったのですが、役割分担がしっかりできていたそうですよ。

(後列左からエンジニアの高橋、西本、植草、北原、喜楽、川原 
前列左からデザイナーの広垣、田中)


- 今回の作品は、人差し指で触ると、心臓の鼓動とリンクして磁性流体が動く様子が見られる、というものでした。ちなみに、「メディアアート」とはどういうものなのでしょうか?

北原:
一言で言うと「技術を少し組み込んだアート」でしょうか。
技術をわかりやすく、小学生にでも触れるようにしたもの、です。

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(北原)

- 今回、「磁性流体」を使うことにしたのはどうしてですか?

喜楽:
私たちは、もともと2チームだったのが1チームになったのですが、一緒にやろうとなった時に「賞を取りたいよね」という話をしました。
Hack Dayに出る目的の多くは「自分が作りたいものを作る」だったり「挑戦したことがないものに挑戦する」ということかなと思うのですが、そのどちらでもなく、とにかく賞を狙いにいこうと。

賞が欲しい、というところから逆算して、「メディアアートの分野はあまりみんながテーマに選ばないのではないか」と、そこを狙いに行けば取れるかもしれない、と思いました。
Hack Dayの賞は、いくらこれはイイ! と思っている作品でも賞が取れるわけではないので、賞から逆算しないと勝てないなと。

広垣:
狙う賞が決まって、それぞれが興味のある動画を探して「これが面白そう!」と雑談していた中で「磁性流体」というワードが出てきたんです。

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(広垣)

- 心臓の鼓動を可視化するというアイデアはどうやって出てきたのですか?

西本:
はじめは、Twitterのキーワードがどこでつぶやかれているかや、Wifiの電波を可視化するなど、いろいろ考えたのですが、どれもすでに前例があった上に、とてもカラフルできれいだったので、これは越えられないなと……。

心臓をテーマにした作品もすでにあったのですが、シンプルでわかりやすいテーマで取り組みやすいというのと、体の中にある自分で見ることができない動いているモノを見えるようにするのは面白いのではないかと思いました。

広垣:
磁性流体でないと成り立たないモノを作りたいと思っていたので、最初に男女の相性チェックをやろう、と検討したのですが「それだったら磁性流体で見せなくてもいいよね」と。
磁性流体特有の毒々しい動きが心臓の鼓動とリンクするのでは、ということで心臓の動きを表現することになったんです。

川原:
磁性流体の動きを生かすためにシリアス目な発表にしよう、展示を見に来てもらえるような発表にしようということを意識しました。

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(川原)

- 2日間の開発で苦労したところはどこですか?

北原:
正直、苦労だらけでした……!
まず、開発初日に磁性流体がまだ手元になかったんですよ。

植草:
磁性流体は、専門の科学商品を売っているところでしか買えないので、作ろうかという話になったんです。
インクのトナーに磁性流体が少しだけ含まれているので、それを集めて、油に浸せば磁性流体ができるのではないかと試してみました。
でも、きれいな磁性流体にならなかったのと、磁性流体が含まれているトナーがなかなか手に入らなかったため、作るのはあきらめて買うことにしました。
磁性流体はボトルに入ったインクのような状態で届くんですよ。

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(磁性流体)

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(植草)

田中:
磁性流体をどんなケースに入れるか、見た目をどうするかも開発1日目の昼すぎくらいまでは考えていただけでした。
磁性流体がキレイに見える見せ方がいいよね、と話し合って、そこからやっと必要な材料の買出しが始まりました(笑)

秋葉原で電子部品やアクリル板を買い、さらに「磁性流体を入れるための半球のアクリルでできたドームが欲しい!」と。その日中に買いに行けるお店を16時くらいに見つけ、17時閉店だったので、内々定者の学生さんにお願いして買いに走ってもらいました(^^

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(この半球が必要でした)

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(田中)

北原:
一部のメンバーが材料の買い出しをしている間に、エンジニアは磁性流体を他のモノに乗せて、どんな風に動くかをプログラムで動かすテストをしていました。

高橋:
今回の作品では、電磁石を下につけることで磁性流体を動かしています。プログラムで電気を流せるようになる「ラズベリーパイ(※)」という小型のコンピューターがあるのですが、それを使うと電磁石をプログラムで動かせるようになるんです。
電気をつけて、はなす、つけて、はなす、というのをその機械にやってもらうんですが、その動きを心拍からもらえるように開発し、iPhoneと通信して動かす仕組みを作りました。

(※)ラズベリーパイ (英語表記: Raspberry Pi) :
元々は教育現場でのプログラミングやデバイス制御などの学習用として開発された名刺サイズの小型コンピューター。ラズベリーパイと電子回路とを組み合わせて、電子回路をプログラムで制御するという使い方が多い。

川原:
心拍はApple Watchに心拍を計る機能が搭載されているので、それを使いました。
ラズベリーパイに心拍のデータを送るところまで私が担当し、高橋が電磁石を動かす部分を担当。その後、どんな動きでそれを見せるかをみんなで決める、という進め方でした。

広垣:
ラズベリーパイ班や心拍班、デザイン班、工作班、という感じで役割分担がしっかりできていたと思います。

北原:
磁性流体は液体なので、別の液体の中に入れないとキレイに見えないんですが、何に入れればいいのかがさっぱりわからず、いろいろ試してみました。
最初は水でやってみたのですが、上に膜ができて濁ってしまいました。その後、界面活性剤が含まれている台所洗剤と水を入れてみたのですがあまりキレイではなくて。
たまたま近くにあった、消毒用のアルコールで試してみたらうまくいったので「アルコールを使おう!」と買いに走りました。

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田中:
球体の中にアルコールを満たして、磁性流体を上から入れるのが大変でした……。
最後に磁性流体を入れるためにあけてある穴をふさぐ→ドームの半球にアルコールを入れる→アルコールを満たした半球にアクリル板を接着→ひっくりかえす……で、アルコールがもれました(笑)

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田中:

今回、蛍光ペンのインクを抜いて、黄色いインクをアルコールに溶かして色をつけたんです。内々定者の学生さんが、光る水をつくっている動画を見つけてくれたので、これを応用できるのではと。
ここでも、そもそもアルコールに色をつけるのかつけないのか話し合い、つけると決まってからも濃すぎると磁性流体が見えにくくなってしまうので、濃さにもかなりこだわりました。

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(半球をひっくり返して……)

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(頑張って上から残りのアルコールを入れているところ)

植草:
2回もれてしまったので、3回目は「もう、これでもれていたら(チーム)解散だね」と(笑)
タイルなどを貼るメジ剤を買いに行って、それを塗ってアクリル板をもう一度接着して、「明日の朝、もれていないといいね」と言いながら解散しました。

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(これが翌朝もれていたら終わりだったそうです……)

広垣:
半球が重力に逆らった形なので、作るのには苦労しましたが、絶対にこの見た目にしたかったのでこだわりました。
この形にしたいと提案した時は反対されたのですが、これは絶対やりたい! と。

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(最初に描いた設計図。かなり近いものができたそうです)

- よくそこまで2日でいけましたね!

北原:
半球の中に入れた磁性流体を動かすための電磁石の磁力がなかなか出なかったので苦労しました。5キロをぶら下げられる電磁石が2つあればいいと思っていたら、以外と磁力が弱かったので買い足したかったのですが、電磁石が買えるお店があまりなくて困りました。
結局、半球の下に強い磁力の磁石を置いて、電磁石で磁力の強弱を制御するというやり方に変えました。

半球の下につけた磁石は、実は私のキーケースについていたものなんです(^^
たまたま、キーケースが椅子にペタッとくっついたのを見て、「これ使えるじゃん!」と。役に立ってよかったです(笑)

……他のみなさんも、そんな尊い犠牲があったことを知らなかったそうです(^^

- プレゼンについてこだわった点は?

喜楽
Hack Dayではプレゼンが一番大事だと思っていたので、本当は丸々1日プレゼンの準備をしたいくらいだったのですが、時間が足りなかったので、帰宅後にメッセンジャーで延々やりとりしながら決めていきました。

西本:
「メディアアート」なのでプレゼンの時も実際に作った半球を置いておくか、動画を作って見せるのかもかなり話し合いましたね。

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(西本)

広垣:
「磁性流体の実物がそこにあることをキチンと意味づけして前に出す」、とか「シリアスな雰囲気にするため、ここに冗談っぽい表現を入れると世界観がこわれてしまうのでは」など、ストーリーを最後まで大事に議論できたと思います。

喜楽:
発表の間合いや、「この言葉を言ってからちょっと止めて」とか「スライドをめくってからこの言葉を入れて」など、句読点ひとつについてもこだわりました。

田中:
磁性流体の値段を言うかどうかもかなり悩みました。
「けっこう高価なモノを使って真剣に作っています!」とアピールしようかとも思い、ミネラルウォーター、ガソリン、磁性流体の値段を比べるスライドも用意していたんですが、世界観がこわれてしまうと思い、使いませんでした。

全員:
(磁性流体が)めちゃくちゃ高い、というのは言いたい……とも思っていましたね。

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(用意していたプレゼン資料)

- 展示してみて反応はどうでしたか?

川原:
(執行役員の)村上さんが見にきてくださって、とてもいい笑顔で「キモいね~これ!(笑)」って。

植草:
展示の仕方にもかなりこだわりました。神秘的な雰囲気を出すためにブラックライトを当てたり、アルコールに色をつけて磁性流体を見やすくしたり。
見に来た人が手をかざしたら動くようにしておいたので、「おおーーー!」と驚かれるとうれしかったです。

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高橋:
できるだけ神秘的な要素を出したかったので、心拍を計るApple Watchを極力見せないことにもこだわりました。

腕にApple Watchをつけてもらうことなく球体に手をかざしたら動くようにしたいということにこだわっていたので、心拍を計る部分を外して、裏側にして半球につけておいたんです。

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(高橋)

広垣:
半球に手をかざしたとたんに動くのが理想で、Apple Watchをつけるという動作をすることで一瞬現実にかえってしまうよね、と。

北原:
「ここにタッチしてください」と書いてあったら誰でも触ると思うのですが、ユーザーに「Apple Watchをつけてください」ということでどうしても違和感が出てしまうのでそれを避けたかったんです。

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(喜楽)

- Hack Dayに今回参加してみてどうでしたか?

喜楽:
このつながりではじめて集まった人も多くて、最終的に全員そろったのは当日でした!
一人ひとりがちゃんと自分のやることを考えて動けていたのがよかったですね。
今回作った作品自体は業務には役に立たないのですが、モノを作る過程や、意見がぶつかった時にどうやって意思決定するのかとか、限られた時間の中でどうモノがができていくのかというところはとても勉強になりました。
このメンバーでまたHack Dayに出場するとしたら、もう一度メディアアートを作りたいですね。
磁性流体もまだ余っているので(笑)

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