「高齢者や障がい者でも、問題なくウェブやアプリで提供されている情報にアクセスして利用できること」を「アクセシビリティ」といいます。
今回は、ヤフーのアクセシビリティ分野の黒帯である中野に、取り組んでいることなどを聞きました。
- まず、アクセシビリティに配慮する、とはどういうことなのでしょうか?
カンタンに言うと、たとえばウェブサイトをいろいろなブラウザー、環境で見られるようにすることです。特に最近は、音声ブラウザーなども含め多様な環境で見られるようにしていくことが必要になります。
できるだけ多くの条件のもとで、過不足なく情報を得られるようにしていくことが、アクセシビリティに配慮するということです。
- アクセシビリティの黒帯になった経緯を教えてください。
Yahoo! JAPANのユーザーインターフェース(以下、UI)を制作するうえでの「実装」プロセスにフォーカスし、実装作業の効率化、最適化を支援するための「UI実装ガイドライン」のワーキンググループに参加しています。
そこで、デザイナーが実装時に使用するガイドラインを作成した際に、アクセシビリティの要件を入れるかという話になりました。私は前職でアクセシビリティの知見があったので、ガイドラインにどのような項目を反映するかについて検討しました。
ただ、ガイドラインができても、実際にサービス上で反映されないと意味がないんですね。そんな時にちょうど、会社概要ページがリニューアルすると聞いたので、アクセシビリティの要件を入れたページを公開することができました。
このページは、JIS X 8341-3:2010という、JISの規格の等級Aに準拠しています。
具体的には、画像に代替テキストを入れることで音声読み上げでも情報を取得できるようにしたり、ページ内のコンテンツを構造化することでマウスやタップ以外でも操作しやすくしたりしています。

(スマホ版会社概要ページ)
会社概要ページのリニューアルをしたことでアクセシビリティ対応の実績ができたので、その後はアクセシビリティの検証ツールを社内に広めたり、UIガイドライン(Yahoo! JAPANらしさを体現するためのUIにおける品質基準について記載したもの)にアクセシビリティの要件を入れたいと提案したりしました。
社内の調整をしながら、アクセシビリティを推進していった点を評価していただいて、去年10月に黒帯に認定されました。
- アクセシビリティ対応の難しいところは何なのでしょうか。
アクセシビリティに対応するとは、できるだけ多くの人にとって使いやすいものを作っていくことなので、どちらかというと品質を上げていくことに近く、直接的な数値効果にはつながりにくいという点です。
数値効果につなげるためには他の対応をやった方がいいという判断もあるので、そこをどうやってサービスの開発や改善のタイミングで組み込めるか、必要性を理解してもらうことが難しいと感じています。
今は、社内への働きかけや、アクセシビリティ対応についてのアドバイスをしたり、アクセシビリティとはどんなものなのかを知ってもらうためにセミナーをやったりしています。

アクセシビリティ対応は、当たり前の品質基準
- アクセシビリティ対応は、どうして必要なのですか?
まず、アクセシビリティに対応していることは、当たり前の品質基準だと伝えることが多いです。
2016年4月に「障がい者差別解消法」が施行されました。その中で障がい者へ不当な差別をしてはいけない、合理的配慮といって、サービス提供者はできる範囲で配慮する、という内容も書かれています。
- ヤフーサービスの中で他にアクセシビリティ対応しているサービスはありますか?
会社概要以外ですと、Yahoo!検索が対応していて、HTMLが音声ブラウザーで読み上げしやすいように書かれています。
また、私は関わっていないのですが、「Yahoo!乗換案内」アプリはさまざまな色覚の方でも路線が区別できるような対応をしています。

(左からiOS版、Android版。 移動手段の形状をタイプ毎に変更して色以外の情報でも識別できるようにしています)
アクセシビリティの対応は、スマホの方がやりやすいんです。基本ソフト(OS)に音声読み上げの機能がついているので、読み上げ用のアプリを買う必要がなく、すぐに使ってもらえるというメリットがあります。
ただ、障がい者のスマホ普及率はまだそれほど高くありません。
パソコンやらくらくホンなどを使っている方も多いため、スマホへのシフトがまだそれほどできていないのは課題だと思っています。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて
- これからやりたいことを教えてください!
アクセシビリティについてのセミナー開催回数をもっと増やして、この取り組みを広めていきたいです。
アクセシビリティに対応しているサービスが増えることで、目の不自由な方、体の不自由な方などにも容易にヤフーのサービスを使っていただけるようにしたい。ただ、障がい者に実際に目の前で使っていただくと、かなり想定とは違う使い方をされることもあります。自分が意図していなかったような使い方で頑張って使いこなされているので、今後はしっかりフィードバックをいただきながら改善していきたいと思っています。
また、ヤフーがアクセシビリティに積極的に取り組むことで、制作・開発会社が「ヤフーが対応することで、やりやすくなる」と言う声も聞いています。
会社概要のページをリニューアルした際には、他社から「ヤフーのアクセシビリティ方針をみて、それならうちも対応しよう」と思っていただけたそうです(^^
今はまだ、作り手側からの期待値が高いなと感じていますが、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、障がいのあるなしにかかわらず、ヤフーを問題なく使っていただけるようにすることを目指しています!