CSR

「ヤフー ステークホルダーダイアログ2021」レポート
「CSOと連携し、課題解決のプラットフォーマーに」

山田泰久氏(左上)、鵜尾雅隆氏(左下)、友田景氏(中央下)、森摂氏(右下)、西田修一(右上)、田村夏子(中央上)

IT(情報技術)で社会課題の解決を目指すヤフーは2020年10月、社会貢献ユニット「CSO※ relation」を立ち上げ、NPOをはじめとした市民社会組織との連携を強化している。社会貢献ユニットアドバイザーに就任いただいた3名を招き、ヤフーがCSOと一緒に新しい未来をつくっていくため、より多くの社会課題解決者を支援するために、CSOとどのようなパートナーシップ(協働)を構築することが望ましいかを議論した。

CSOは「Civil Society Organizations(市民社会組織)の略称。 NPO法人、市民活動・ボランティア団体(以上、志縁組織)に限らず、消費者団体や、研究者、自治会・町内会、婦人会、老人会、PTAといった組織・団体(以上、地縁組織)などのことで、ここでは第3セクターの総称として使う

PROFILE

顔写真:鵜尾雅隆氏
鵜尾雅隆氏(特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 代表理事)
国際協力機構、外務省、米国NPOを経て、ファンドレイジング戦略コンサルティング会社ファンドレックス創業。寄付、社会的投資の進む社会を目指して日本ファンドレイジング協会を創設。著書に『ファンドレイジングが社会を変える』など。
顔写真:友田景氏
友田景氏(株式会社ビズデザイン大阪 代表取締役)
25歳で柏原市議会議員選挙をトップ当選。4年後も連続トップ当選。NPO法人にて、インターンシップ事業を全国展開。経営コンサルティング会社に転職の後、東京で企業役員を経て、2017年株式会社ビズデザイン大阪を設立。他、2社の会社経営と大学の非常勤講師など、政治・行政、NPO、企業、大学の4つのセクターの経験を持つ。
顔写真:山田泰久氏
山田泰久氏(一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事)
1996年日本財団に入会。2009年から公益コミュニティサイト「CANPAN」の担当。情報発信、IT活用をテーマに様々なNPO支援の活動に取り組む。2016年4月、一般財団法人非営利組織評価センター(JCNE)の設立とともに、業務執行理事に就任し、非営利組織の組織評価・認証制度の普及にも取り組んでいる。
顔写真:西田修一
西田修一(ヤフー株式会社執行役員 SR推進統括本部長)
2004年にヤフー株式会社へ入社。「Yahoo! JAPAN」トップページの責任者を務め、ヤフー初となる「Yahoo! JAPAN」トップページの全面リニューアルを指揮。また、東日本大震災の復興支援と検索を掛け合わせたキャンペーン「Search for 3.11 検索は応援になる。」を立ち上げる。検索事業本部長を経て、2017年4月より現職。
顔写真:田村夏子
田村夏子(ヤフー株式会社 SR推進統括本部 CSO relation-manager)
2008年にヤフー株式会社へ入社。法務、人事を経て、2014年4月にYahoo!基金に異動し、東日本大震災復興支援助成やIT助成など複数の事業をプログラムオフィサーとして企画・運営しながら事務局長も務める。2020年10月から現職。
顔写真:森摂氏
ファシリテーター=森摂氏(オルタナ編集長)
日本経済新聞社入社後、流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2002年9月退社。同年10月、在外ジャーナリスト協会を設立、代表に就任。2006年9月、株式会社オルタナを設立し、2007年3月にサステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」を創刊。現在に至る。

■「プラットフォーマー」としての原点に立ち返る

――ヤフーは2020年10月、社会貢献ユニット「CSO relation」を立ち上げました。「CSO」(市民社会組織の略称)は、日本ではまだ耳慣れない言葉だと思いますが、ネーミングの理由や、なぜこうしたプラットフォームを作られたのか、その辺りから教えてください。

西田:対象になるのは、ほぼNPO(非営利組織)になると思います。ですから、「NPO relation」にしても良かったのですが、法人格を表すNPOとするよりも、もっと広い概念でとらえようと「CSO」としました。NGO(非政府組織)や消費者団体、町内会やPTAなども含み、「社会課題を解決しようとしている方々と一緒に取り組みをしたい」というのが、基本的な考え方です。

ヤフーはもともと「課題解決エンジン」というミッションを掲げていました。いまは「UPDATE JAPAN(アップデート ジャパン)」に変わっていますが、ITで課題を解決していくという姿勢には変わりありません。

2017年に社会貢献活動を行う事業部として社会貢献ユニットが誕生しましたが、数年ほど前から、どれだけ社会にインパクトを出せているのだろうかと、思案するようになりました。

国内だけでも、たくさんの課題がある中で、私たちがそれらを解決することは極めて難しい。私たちには専門性がありませんし、フィットする課題もそう多くありません。

そうしたなかで、「プラットフォーマー」としての原点に立ち返り、多くの課題に立ち向かっている「課題解決者」の方々を支援することが、結果的に多くの課題を解決するのではないかと考えたのです。それがCSO relationを立ち上げたきっかけです。

――田村さんはYahoo!基金などを担当されてきましたが、CSO relation-managerとして、どのように運営しているのでしょうか。

田村:Yahoo!基金は、「基金」という形の上に何をするかを考えれば良かったのですが、CSO relationは新たにできた役割なので、何をどのようにするかはゼロベースで考えねばならず、さらに難易度が上がったように感じています。

それもあり、外部有識者の方にお知恵をお借りしたく、最初にアドバイザー制度を導入しました。課題解決に取り組む方を知り、つながるため、どのようなことができるか、どのようなアプローチがあるのかを悩みながら進めています。

今期はトライアルでいくつかの企画を実施しました。その中で手応えがあったものは継続的に行っていく予定です。

CSO relationの概念図
CSO relationの概念図

【CSO relationの活動事例】
・NPO向けプロに学ぶ「伝わる」活動紹介動画の作り方講座
 Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラムと協働でプロのクリエイターを講師に迎え動画制作の基礎を学ぶ講座
・社内向け「社会課題解決の現場」
 Yahoo!ネット募金と協働で社会課題の解決に取り組む方をゲストにお迎えして、取り組む社会課題について社員向けに語っていただく場。第1回「災害支援」、第2回「環境」をテーマに実施

■ 組織と組織をつなぐ存在が変革を誘発する

――社会貢献ユニットアドバイザーとして、鵜尾さん、友田さん、山田さんが就任されました。皆さん、非営利業界のキャリアが長いですが、最近の状況やヤフーに期待することなどについてお話しいただけますか。

鵜尾:新型コロナウイルス感染症が拡大し、社会課題が可視化されています。そうした課題を解決するために、世界では、企業やさまざまなセクターが多面的につながり、連携し合う傾向が強くなってきました。

よく言われることですが、イノベーションを起こすのは「バウンダリースパナ―」、つまり「境界線をつなぐ人々」です。この組織と組織の境界線をつなぐ存在が、イノベーションの誘発剤として非常に重要だと言われています。

まさにCSO relationがそれを体現しようとしていることに可能性を感じています。

山田:NPO法人の数はいまや5万団体に上り、一般社団法人も6万団体を超えます。その他も含め法人格のある非営利組織だけでも14万団体以上になります。しかし、まだ日本では、非営利組織への信頼感がそこまで醸成されていない現状があります。

私が所属する非営利組織評価センターでは、非営利組織を対象に、組織の信頼性を高め、社会に発信していく取り組みをしています。

その一つが、組織運営やガバナンスが一定水準以上のレベルの団体を認証する「グッドガバナンス認証」です。こうした「組織の信頼の証」を多くの方々に知っていただくうえで、ヤフーは大きな力になると思っています。

実際、Yahoo!ネット募金のウェブサイトでは、「グッドガバナンス認証」を取得している団体については、認証マークを表示していただいています。

今回のダイアログの話をいただいたときに、NPOではなく、「CSO」という形で幅広くとらえられているのが印象的でした。コロナや災害など、有事が頻発しているなかで、法人格の有無に関係なく、第三セクターや市民の活動が重要になってきています。幅広い団体・人との連携を深めていくという考え方やコンセプトは、今の時代に合っていると思いました。

友田:私自身は若い時に市議会議員をしていたり、コンサルティング会社やNPOで働いたり、非常勤講師を務めたり、「政治」「経済」「NPO」「大学」と4つのセクターを経験してきました。

最近では、ヤフーのギグパートナー(副業人材)に選んでいただき、「社会的インパクト評価」の考え方を用いて、ヤフーの社会貢献サービスのマネジメントを改善していくという取り組みをお手伝いさせていただきました。

ヤフーはプラットフォーマーとしての力が日本随一ですので、その力を存分に発揮していただくことが、何より社会課題の解決に一番早く役立つと考えています。

■ 社会貢献は、生きがいや企業の成長につながる

――CSO relationの最大テーマは、やはり企業とCSOのパートナーシップだと思います。最近のパートナーシップの良いところや課題など、どう見ていますか。

特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾氏
特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾氏

鵜尾:SDGs(持続可能な開発目標)の機運が高まってから、パートナーシップのなかで、非常に進んできたと感じることが2つあります。

1つは、成果を出すために、面的な関係性で企業とNPOの連携が進んでいることです。ヤフーが中心となって立ち上げた緊急災害対応アライアンス「SEMA」(シーマ)は、まさにその代表的な事例です。

もう1つは、社員の参加です。社員とCSOの接点をつくる企業も増えていますし、社員自身が社会に貢献することが、自分の幸せや生きがいにつながっていると実感する方が増えているように思います。社員が積極的であれば、その分活動にも深さが出ます。

一方で、世界的な潮流として、その活動は本当に社会にポジティブな変化を生み出しているのか、評価が厳しくなってきている傾向もあります。

――日本企業のサステナビリティの取り組みを見ていると、「本業を通じて社会課題を解決する」という動きが盛んです。それはもちろん素晴らしいことですが、伝統的な寄付やボランティアが軽視されているのでは、という懸念もあります。

鵜尾:仰る通りです。特にCSV(共有価値の創造)という考え方が広まるにつれて、「ビジネス」の側面が強調されました。

私は、企業の本業であれ、個人の寄付やボランティアであれ、多様な形で社会に変化を生み出していくことが重要だと考えています。そうした社会との接点を増やすことが、企業にも新しい発想や気付きをもたらすはずです。

――山田さんはいかがですか。

山田:この5年ほどかなり変わってきたと感じるのは、企業とNPOがより対等になり、学び合う関係になってきたということですね。NPOが持っている専門性やノウハウなどを企業に提供することが増えてきました。例えば、LGBTQの取り組みをしているNPOが、企業で講演をしたり、アドバイスをしたりしています。

■ 企業とNPOのギャップをどう埋めるか

――友田さんは大阪府と石川県の両方で暮らしていますが、地方の視点からパートナーシップをどう見ていますか。

友田:2011年の東日本大震災の際は、企業が連携して復興支援に取り組む事例がありました。例えば、カルビー、カゴメ、ロート製薬が連携して「みちのく基金」を発足したり、マイクロソフトとDELLが連携してノートパソコンを寄贈したり、パソコン講座を無料で開いたりしました。

しかし、NPOや地方は一つ一つの粒が小さく、企業の「イコールパートナー」としてなかなか受け皿になりにくいという課題もあります。NPO側を束ねたり、企業側を束ねたり、そういったことができる存在がいないと、規模が合わなさ過ぎて仕組みがマッチしない例も見受けられました。

私も企業から「地方創生にコミットしたい」といった相談を受けるのですが、1地域だけではロット感が合わないことがよくあります。そこで、複数の地域で展開しようとしたときに、それらの地域が同じ問題意識で向かえるか、という問題が出てきます。

また、NPOは比較的組織が小さいところが多いので、代表者の経歴や力量によるところが大きく、属人的な組織がまだまだ多いというのが実情だと思います。

企業とCSOや地域がイコールパートナーとして、コレクティブ・インパクト(集合的な成果)を生み出すには、まだ課題も多いという印象です。

株式会社ビズデザイン大阪 代表取締役 友田氏
株式会社ビズデザイン大阪 代表取締役 友田氏

――非営利組織や地域のポテンシャルを掴むのはなかなか大変ですね。田村さんは、どのように見ていますか。

田村:ご指摘通りで、企業側の視点でも、NPOは比較的小さい組織が多く、企業とイコールパートナーになるには規模感の差は否めません。

ただ、規模が小さいことと取り組む課題の大きさはイコールではないですし、規模が小さい組織とはパートナーになれないわけではありません。

だからこそ、大小さまざまな規模で活動されているNPOの中から最適なパートナーを見つけだすことは担当の力量が問われると思っています。

■ 生きたデータベースには「関係値」が必要

――ここまでは企業とCSOのパートナーシップのあり方について議論を進めてきました。西田さん、アドバイザーのご意見を受けて、CSO relationはどういうものを目指していきたいか、教えてください。

西田: いまCSO relationとして取り組んでいることの1つに、CSOのデータベース化があります。

NPOをはじめ、たくさんのCSOの方々がいますが、何かある問題が起きたときに、関連する活動をしている団体はどこなのか、都度探さなければなりません。属人的な交友範囲のなかでパートナーを選んだり、著名な団体に行ったりしてしまいがちです。本当はもっとフィットする、あるいは素晴らしい成果を上げている団体があるかもしれません。

ですので、まずはCSOに関する情報をジャンルごとにデータベース化し、マッチングできるような仕組みを作っていきたいのです。

ただ、これでは単なる情報の集まりでしかなく、ここに血の通ったコミュニケーションが必要だと思っています。コミュニケーションが無いただのデータベースでは、関係値が作れていませんので、すぐ連携できなかったり、場合によってはお断りされてしまったりすることもあるかもしれません。

その団体が何に困っているのか、どんな活動をしているのか、他にどんなことができるのか――。日々そうしたコミュニケーションを取ることによって、いざという時に、その関係が生きてきます。

まずは「データベース化」と「生きた関係値」をしっかり築くことに取り組んでいこうとしています。

■ 関係を築けるCSOとは?

――山田さんの前職である日本財団のCANPAN(カンパン)プロジェクトとも、NPOのデータベース化という点で共通していますね。

一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事 山田氏
一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事 山田氏

山田:どうしてもデータベースは、古い情報が溜まってしまい、新しい情報に更新されないという問題がありました。西田さんが言われたように、使えるデータベースにするには、やはり情報のアップデートが必要です。CANPANでは、一定期間更新されないと、非表示になり、常に最新の情報が載っている団体だけを検索できるような仕組みにしていました。

法人格のあるなしにかかわらず、さまざまな分野の団体・プロジェクトが増えているので、CSO relationのデータベースで、NPOに限定しないのは、実効性の高い生きたデータベースになると思います。

――とはいえ、NPOやCSOのポテンシャルを知るのはなかなか難しいですね。

山田:はい。企業でも「ガバナンス」(組織統治)が重要視されていますが、組織体という意味では、やはり非営利組織にとってもガバナンスは重要です。

私は「NPOの信頼」をテーマに研究していますが、支援を受けた実績も、その団体の信頼度を表すと考えています。企業や行政が支援した実績が可視化されれば、その団体に対する信頼感を醸成できますので、こうした情報公開も大事なポイントになると思います。

――友田さんは、NPO選びにおいてどのような尺度が大事だと思いますか。

友田:ガバナンスという意味では、理事会がきちんと機能しているか、理事にどういう人が入っているかが、判断材料の1つになると思います。

最近では、副業・兼業がブームになってきていますし、NPOに多様な人材がいると、その団体の成長につながります。ですから、常勤職員だけではなく、スタッフやボランティアにどのような人がいるかということも、1つのポイントではないでしょうか。

――鵜尾さんは、お金の面から組織を見ることも多いと思いますが、いかがでしょうか。

鵜尾:英経済学者アダム・スミスは、「神の見えざる手」によって、市場経済の調和が図られる――と説きました。いま、ファンドレイジング(資金調達)の業界では、「市場の見えざる心」をどう動かすかが1つの議論になっています。これは共感に基づく行動をどう起こすか、ということです。

ヤフーには8000万人を超えるユーザーと、100万人を超えるYahoo!ネット募金の寄付者がいますから、媒介者として、現場で課題を解決するCSOとユーザーをどのようにつなぎ、寄付につなげていくかも重要な視点ではないでしょうか。

■ 世界中で孤立・孤独が深刻な社会課題に

――先ほど新型コロナウイルス禍で、社会課題が可視化されたというお話がありました。懸念している社会課題があれば教えてください。

鵜尾:特にこのコロナ禍で、孤独・孤立は大きな問題になっています。世界保健機関(WHO)は、2030年の世界最大の疾患を「うつ病」だと予測しています。

「kodokushi(孤独死)」が英単語になるほど、日本の孤立・孤独化率は先進国でもトップクラス。英国に次いで、日本にも2021年2月、孤独・孤立対策担当大臣が誕生しました。英国の戦略レポートは、こうした課題を解決するには、NPOとの協働が重要だと強調しています。

ファンドレイジングの世界でも、支援者同士や支援者と受益者をコミュニティー化するなど、つながりをつくることで人々の幸福感が高まるような仕掛けができないか、一生懸命考えているところです。

―――地方で暮らす友田さんは、過疎が進み、孤独・孤立の問題を目の当たりにされているのではないでしょうか。

友田:地方に暮らしている身からすると、地方にこそICT(情報通信技術)が必要だと思いますが、地方ほどICTが進んでいない現状がありますね。高齢化が進む地方では、まだまだスマホを持っていない人も多いです。

孤独・孤立に関していえば、私は生活保護を受ける方々などの住宅提供ビジネスをしているのですが、関係性を断ち切ったり、携帯電話をすぐ捨ててしまったり、そういった方がホームレスになりやすかったりします。

発達の問題などもあって、ちょっとしたミスでも「ごめんなさい」が言いにくく、相手が心配して電話を掛けると、本人は怒られるから嫌だと携帯を捨ててしまう。その結果、孤立してしまう方が結構な割合でいます。

ですので、コミュニケーションを取りたがらない人と、コミュニケーションをどう取っていくのかということは、非常にナイーブで難しい問題だと実感しています。

――田村さん、これまでの議論で、データベースをつくるうえでのコミュニケーション、孤立・孤独、さまざまなキーワードが出てきました。これからCSO relationを通じて、どのようなことに取り組んでいきたいですか。

ヤフー株式会社 CSO relation-manager 田村
ヤフー株式会社 CSO relation-manager 田村

田村:皆さんから重たいボールを受け取りました。

データベース化に向けて、単にYahoo!ネット募金に掲載されているとか、Yahoo!基金で助成したことがあるとか、そういった情報だけではなく、そもそもどんな団体がいるか、そこではどういうことをしているのかなど、まずは「知ること」が大事だと実感しました。

「知る」には、コミュニケーションが必要です。コロナ以前は、紀尾井町オフィスにあるオープンコラボレーションスペース「LODGE」(ロッジ)に、企業や非営利組織、自治体、学生など多様な人たちが集っていました。まだ漠然としたイメージですが、CSO relationとして、そうした場を作れたらいいなと思い描いているところです。

コロナ禍でオンライン化が進み、今まで会ったことのない地方の方ともお話しする機会も増えてきました。

課題解決に取り組んでいる方、非営利組織、企業、公的機関、自治体など、多様な方々が意見交換し、そこから何かが生まれる場をつくっていきたい。少しずつつながっていって、それがどんどん広がっていくような場づくりができればと思います。

■「CSO relation」が「プチつながり」をつくる

――CSO relationがこれから力強く成長していくために、より多くのユーザーを巻き込むために、期待を込めてご意見をいただけますか。

鵜尾:ヤフーはこれまで社会貢献の領域で、時代に合ったコンセプトとともに、重要なブレイクスルーを生み出してこられたと思います。私が特に思い出すのは、Yahoo!ボランティアが立ち上がったばかりのころ、スタッフの方がこれは「プチボラ」だと仰っていたのです。

1995年の阪神大震災を機に、ボランティアが一般的になりましたが、もう少し気軽にボランティアできる場が必要だということでした。

本日の議論を通して改めて「CSO relation」ということを考えると、「プチボラ」ならぬ「プチつながり」。深くはつながれなくても、プチつながり感のようなものは、今の時代に求められていますし、8000万人のユーザーと課題解決の現場が「プチつながり」すると何が起きるのか、非常に可能性を感じます。

先ほどの孤立・孤独という話にも関連しますが、前野隆司・慶應義塾大学大学院教授は「幸福の4つの因子」を提唱しています。1つ目は自己実現と成長の「『やってみよう!』因子」。2つ目は、他者とのつながりや感謝の「ありがとう!」因子。3つ目は「なんとかなる!」因子、4つ目は「ありのまま!」因子です。

Yahoo!ボランティアやYahoo!ネット募金といった社会貢献のプラットフォームは、この『やってみよう!』因子」や「ありがとう!」因子と密接に関係しますから、幸福度を高める一助になると考えています。

allMembers

山田:実は3つ考えていたことがあります。1つ目は、家族間でチャリティや社会貢献について語ることは、大きな動機付けになりますから、Yahoo!きっずなどとも連携して、家族間での関係性とヤフー、その先のCSOにつながっていくような仕掛けができると面白いのではと考えました。

2つ目は、社会貢献やチャリティは、どうしても課題が深刻で真面目になってしまいますが、海外の事例を見ていると、エンターテインメント性のある取り組みが目立ちます。例えば、ヤフオク!では、芸能人がチャリティオークションをされていますが、エンタメとチャリティの掛け合わせは、より多くの方々に知ってもらうきっかけになると思います。

3つ目はYahoo!ニュースに関してです。NPOの方々がYahoo!ニュースに取り上げられることは、団体や課題の認知が進み、とても喜ばしいことです。その一方で、コメントの誹謗中傷も多く、心が折れてしまうということもあります。

応援の部分がもっと可視化されて、エールを送り合うような社会になれば、世の中がもっと良い方向に動いていくはずです。やはり活動している当事者からすると、応援の声を聴けるというのは大変励みになります。

友田:「プチつながり」とCSO relationのことを掛け合わせて思い出したのが、1970年代に発表された米社会学者マーク・グラノヴェッターの「The Strength of Weak Ties」 (弱い紐帯の強さ)という論文です。弱い連帯やつながりが強さを生むという説です。

このインターネット社会において、まさにヤフーの強みを発揮できるのではないでしょうか。弱いつながりを作ることで、救われる命があったり、支援の輪が大きくなったり、いろいろな取り組みが力強く前に進むようになるのではと思います。

――その意味では、これまでの日本はどちらかというと「中央集権型」でしたが、これからは「自律分散型」で各スポットでのポテンシャルを高めていくことが重要になりそうですね。

山田:CSO relationを通じて、人の動きをもっと可視化できないでしょうか。例えば、3.11の「検索は応援になる」やYahoo!ネット募金では、何人が検索したか、何人の方が募金に参加したか、人の動きが可視化されています。そうした人の動きを可視化することで、「他の人もやっているなら私もやってみよう」という機運が高まるのではと思います。

検索は応援になる

田村:とても面白いアイデアですね。確かにトライするハードルが下がると思います。各サービスの諸事情もあり、簡単には言えませんが、ぜひ検討したいと思います。

鵜尾: SDGsは、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」というスローガンを掲げています。日本を代表するITプラットフォーマーのヤフーとして、IT業界全体の成長といった文脈で、「誰一人取り残さない」ということを考えていただけると非常にうれしい。孤立・孤独の課題先進国である日本で、新たなソリューションが生まれるかもしれません。

今の時代、自分が「かけがえのない存在である」と認識することはなかなか難しい。「自分は代替が利く」「いつでも取って代わられる」という感覚を持っている人が増えています。

先ほど、社会貢献のプラットフォームで「人の動きを可視化する」という話がありましたが、自分自身が社会の構成員、活動の一員だと認識することは、「かけがえのない存在である」という意識にもつながるのではないでしょうか。

■「誰一人取り残さない」社会をITでどう実現するか

――人の動きの可視化やSDGs、孤独やつながりの話をいただきました。西田さん、どのように受け止めていますか。

西田:そうですね。あらゆる人・モノがITによってつながって、そこにAIというものが介在していくというのが、これから私たちが向かう未来です。

「誰一人取り残さない」という言葉をいただきましたが、いかに人の豊かさのような部分を取りこぼさずに未来にシフトしていくか――ということが非常に大事だと再認識しました。

高齢者の方がスマートフォンを持ちたがらないように、便利であることと幸せであることは別物で、場合によっては対極にあるように見えてしまうことがあります。それらを近づけて、統合していくことが必要です。

私たち企業やCSOの方々、あるいは生活者という方々と、どうやってつながりながら、便利なだけではない「取り残さない」状態を作っていけるか、非常に重要な視点だと改めて感じました。

友田:さまざまなアクションがある中で、どうしても「DO」(行動する)が賞賛される社会になっていっていると思いますが、人の権利そのものは「BE」(存在する)にあると考えています。

その人の存在そのものが認められないと、SDGsにも掲げられている「誰一人取り残さない」ということが実現できません。この社会の中で、当然動けない人もたくさんいます。

個人的には、そういった「BE」が認められるような社会づくりに役立つCSO relationであるとすごくうれしいです。たくさんのDOが生まれてくることは当然喜ばしいことですが、BEが認められる社会になっていくと、日本社会全体として良い社会になっていくのではないかと感じました。

――「DOからBE」、とても重要な視点ですね。田村さん、このメッセージをどう受け止めますか。

田村:本当に仰る通りだと思います。何かをするのではなく、そもそもその人の存在を認めるということは、根本的に大事なことです。

やはりそういう社会になっていくことが、幸福感を高め、安心して暮らせる社会になるのだと思いました。それをどう私たちが実現できるのか、まだ答えはないですが、本日の意見を生かしていきたいです。

■「アジャイル開発」手法で課題解決を加速する

――「バックキャスティング」は、あるべき姿を描いて、そこから逆算して少しずつできるところから始めていくということです。今日のダイアログに留まらず、議論が進むことを期待しています。

ヤフー株式会社 SR推進統括本部長 西田
ヤフー株式会社 SR推進統括本部長 西田

西田:これまでの議論を聞いていて、リアルかバーチャルかはさておき、CSO relationは結局のところ、「場づくりなのかもしれない」と思いました。

システム開発手法として「アジャイル開発」というものがあります。これは仕様がどんどん変わっていく中で、臨機応変に対応するために、朝会や夕会でばっと集まりながら、変更点などを共有し、機敏に柔軟に開発を進めていくというものです。

そのアジャイル開発の一つに「スクラム」というやり方があります。スクラムマスターという人がファシリテーションをしながら進めていきます。

ポストイットなどにタスクを書いて並べ、得意な人が「自分はこれをやります」と手挙げ式で、そのタスクを取っていく。気付くとすべてのタスクが、それぞれが得意な人に割り振られて、開発が進んでいくというやり方です。

同じように、この社会課題の解決の分野でも、課題を挙げて、タスクリストをつくり、得意な人が手挙げ式でどんどん取っていくと、ある程度の成果が出るような仕組みづくりができるのではないか。CSO relationをきっかけにそうした場をつくれれば、すごくワクワクする未来が描けるのではないかと思いました。

改めまして、鵜尾さん、友田さん、山田さん、本日は本当にありがとうございました。非常に気付きと学びが多く、イメージが広がったダイアログになりました。

関連リンク

このページの先頭へ