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企業情報

2023.01.05

「オンラインの働き方」で社内コミュニケーションはどう変化したか?

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2020年、新型コロナウイルス感染症の流行が、ビジネスにも多くの影響を及ぼしました。ヤフーでは働く場所を自由に選択できる制度「どこでもオフィス」の利用回数が、月5回から回数制限なしになりました。それに伴い、コミュニケーションの共通の空間がオフィスからオンラインに変わりました。
コミュニケーションの大きな変化が起きてから、2年が過ぎようとしています。私たちのコミュニケーションはどのように変わったのでしょうか? 今回は、コミュニケーションを含めた働き方の検討を進める人事担当者に、ヤフーにおける社内コミュニケーションの変化を聞きました。

松井 あずさ(まつい あずさ)
物流会社、コンサルティングファームにて労政・制度企画運用などを経験後、2021年4月にヤフーに入社。
ピープル・デベロップメント統括本部人事企画部にて、働き方の働き方の検討やサーベイの実施など、組織開発担当として従事しつつHR(Human Resource)ビジネスパートナーとして部門との伴走を目指す。

働き方の大きな変化

コロナ禍の変化として、ヤフーでは「リモートワーク」が当たり前になりました。まず、2014年から導入している、場所に縛られないで働くことができる制度「どこでもオフィス」が2020年に利用回数の制限が撤廃となりました。さらに今年度からは、飛行機通勤や居住地の全国拡大などを行いました。

ポジティブな変化として、「基本的に毎日オフィスに出社する」働き方がネックになって働くことを諦めていた優秀な人材が働き続けられるようになりました。そして、「どこでもオフィス」を実現できたことでヤフーにより興味を持って入社される方が増えたことを肌感としても感じています。中途入社者の応募も一都三県以外の地域からの応募が増加し、2022年6月には4割近くを占めるまでになりました。

人事制度で「えらべる勤務制度」という、育児や介護の必要があることを条件に月単位で休む日を申請できる、選択的週休3日制度があります。その制度の利用率が、この働き方になってから低下傾向になりました。おそらく通勤時間が減り、在宅時間が増えることによって、育児や介護など、プライベートの事情に柔軟に対応できるようになったのではと思います。社員が休みを取らずに、日々の生活の中で柔軟に対応できるようになったことは、大きな変化だと思います。
そして、生活も仕事も、人生のひとつという「ワーク・イン・ライフ」という感覚を持つ人がより多くなったと思います。その一方で、一緒に働く仲間と当たり前に直接会っていた日常が大きく変化したので、コミュニケーション面でのギャップや課題の声は出てきています。

コミュニケーションの変化

コミュニケーション面でどういった変化や課題・工夫がされているのかを把握し、施策の検討などに生かすため、約半年に1回、「コミュニケーション状況調査」を実施しています。
2021年10月の調査と2022年6月の調査結果を比較すると「課題を感じている」と回答した割合は低下しており、全体的には改善に向かっています。課題を感じているという回答が減少した要因のひとつとして、社員の多くがリモートを中心とした働き方に徐々に適応してきたからではないかと考えています。

当初は、それまでの働き方とのギャップが大きく、多くの社員がコミュニケーションの変化を課題として感じていました。徐々にコミュニケーションの課題が具体的に認識されるようになり、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、効果のある対応策がシェアされるようになりました。現在も最適なコミュニケーションの形を模索し続けており、その中で出てきたアイデアを社内のポータルサイトにまとめ、誰でも見られるようにするなどで展開するよう心がけています。

オンラインの働き方で希薄になったつながりづくりの施策

具体的な課題(上位項目)
業務外の会話(雑談)がしづらい
業務に関する気軽な会話がしづらい
話相手の反応が見えにくい
業務関係者以外の人とコミュニケーションする機会がない/少ない
新たな人間関係を作る機会がない/少ない

具体的な課題として上位にある内容を見ると「業務以外の会話がしづらい」「業務関係者以外とコミュニケーションをする機会がない」など、つながりの希薄化が見られました。
そういった課題に対する全社的な施策は試行錯誤中ですが、その一つとして「懇親会費」の施策が2022年の4月からスタートしています。
これは、社員間で行われる懇親会の費用を補助する(5,000円/月)ものですが、これまで社員の半数以上が毎月利用しています。そのほかにも社内レストランでのランチの無料提供や、2人以上のグループに無料でドリンクを提供する「ともカフェ」も実施しています。
※無料ランチ、ともカフェは、新型コロナの拡大状況を踏まえて運用実施

また、業務にかかわるテーマから趣味に関するテーマまでさまざまな雑談ができる雑談会を定期的に開催しています。このような取り組みの積み重ねにより、課題が減少してきたのではないかと考えています。

業務上のコミュニケーションの課題

また、業務を行う上で必要になるコミュニケーションについては、工夫や行動変容によって改善されています。社員自身も「生産性が上がった」もしくは「下がっていない」と回答した割合が約9割以上にのぼっています。
一方で、業務を通じてやりがいや達成感を感じているか、自己成長ができている実感が持てているか? などについては課題があると思っています。

以前は、会議室からの移動時間など、ちょっとした隙間時間で感謝したりねぎらいの声をかけ合ったりしていたこともあったと思います。リモートでは意識してそのような時間をつくったりテキストで伝えたりする必要があります。また、業務遂行のプラスアルファとなる部分のコミュニケーションについては、個人として課題を感じていても声をあげづらいため、課題として認識されづらいのではないかと思っています。

対面のコミュニケーションがよいシーンは、親睦会やブレスト、初対面の方とのコミュニケーション

「対面のほうが良いと思うシーンの頻度」の調査では、「月1回程度」と回答している割合が増え、最も多い割合となっています。一方、より高い頻度を求める割合は減少しました。
また、対面のコミュニケーションが好ましいシーンとしては、親睦会、アイデア出し、ブレスト、初対面の方とのコミュニケーションが増えており、メンバーが対面でのコミュニケーションを目的に応じて使い分けるようになってきたと感じています。

そういった対面コミュニケーションのニーズに応えるため、2022年の4月から、アイデア出し、ブレストや業務上の関係性構築を目的とした対面の場をつくるための「合宿費」の補助をスタートしています。利用した社員の声として、「会社とは違う雰囲気の中でリラックスした状態でいいディスカッションができた」「普段とは全然違う一面を見ることができ、距離が縮まった」「オフラインとオンラインのどちらも良さがあることを今回の合宿で再認識できた」など、ポジティブな声が聞こえています。

よりパフォーマンスを発揮するためには

パフォーマンスが上がるような働き方を都度選択
チーム内の相互の理解を深めていくことが重要
理想形の共通認識を持ち、その理想に向かって行動

まず、前提として、ヤフーはフルリモートの働き方ではありません。従来のオフィスに変わる共通空間としてオンラインという場はありますが、パフォーマンスが上がるような働き方を都度選択してもらう、という考えです。

働く場所の選択肢という点では、オフィスを目的ごとに最適化した「実験オフィス」や、サテライトオフィスの利用などといった施策も行い、「会社か自宅か」の二択ではなく、パフォーマンスが発揮される場所を選べる、まさに「“どこでも”オフィス」の取り組みを進めています。

多くの社員がオンラインとオフラインの使い分けに慣れてきているため、さらに個人のパフォーマンスや組織力を向上するための取り組みとして、チームとしての最適な働き方をすり合わせていけるとよいと思っています。そのためにはそれぞれが抱えている働き方の背景について対話し、チーム内の相互の理解を深めていくことが重要だと考えています。

働く場所、働く時間、働く環境など、自分にはどういう背景があるのか、また、1人1人のコミュニケーションの好みは結構ばらつきがありますが、そういった働き方のベースとなるような情報を自らチームメンバーに共有することは現在の働き方においてはさらに大事になると思います。 チームとしてパフォーマンスを発揮できる状態を知るためにも、相互に対話することが必要です。個々の生活に踏み込んだ内容も多く含まれるので、会社の組織内でこれらを共有しあうことにまだ慣れていない人も多いかもしれません。そこまでにはまだ ハードルもあると思いますが、ワークショップなどを取り入れながら積極的に推進していきたいと考えています。

社内コミュニケーションの変化や現在認識している課題点を中心にお話してきましたが、変化が生じてから約2年以上がたち、これからはアプローチの仕方を変えていかないといけないと思っています。
具体的には働き方の変化が生じてから入社した社員の割合が増していくなかで、リモート中心の働き方になる前との比較で課題を設定するアプローチ自体が、現状に沿っていないのではと感じています。
変化が生じる前の働き方と比較して失ったものを補うためのアプローチも重要ですが、これからは、各組織の理想形がどういうものなのか共通認識を持ち、組織がその理想に向かって行動できるようなアプローチにシフトしたいとも考えています。

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