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2021.05.27

ビッグデータはリアル店舗のファッションフロアを改善できるか?

ビッグデータはリアル店舗のファッションフロアを改善できるか?

こんにちは、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームです。
これまで紹介してきたデータ活用レポートは、基本的にネット空間における話になりがちですが、やはりリアル空間・現実社会で生活している場も重要なことに変わりはありません。そこで、ヤフービッグデータを使ってリアルの場に関しても分析を活かせないかを検討してみました。

今回取り組んでみたのが、「もしもヤフーのビッグデータを使ってファッションフロアを改善してみたら」というものです。ここではわかりやすいように、以下の条件で架空の商業ビルのファッションフロアをイメージして作成してみました。

・とあるターミナル駅の商業ビルのファッションフロア ・入居店舗の選定は2020年の検索数の上位群からファッション関連ブランド名をランダム抽出して配置

上の条件にて、次のようなフロアサンプルを作成してみました。

とある商業ビルのファッションフロア(イメージ)

ランダムでピックアップしたため現実的にはありえない店舗構成になっているかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。さまざまなターゲット層のブランドが一つのフロアに集まっている感じになっていますね。
この架空のフロアをもとに、ビッグデータからフロアをどのように改善できるアプローチがあるかを考えてみましょう。

フロアを評価することはできるのか?

では、早速フロアを改善していきましょう。そのためにはどのようなアプローチでの検証が必要となるでしょうか? 多くの人が最初に思いつくのが、「このフロアに入っている店舗は、この組み合わせで良いのか?」という点だと思います。そのためには、まず評価ができる形にしていかねばなりません。つまり、数値に置き換えて客観的に評価できる状態を作れるかどうか、ということになります。
そのためには店舗と店舗との相性関係を数値に置き替えて可視化できれば、検証ができそうな気がします。その昔は店舗に訪れるユーザーの紙袋のブランドを店員がみて相性を判断していたこともあったと聞きますが、ビッグデータを用いてこのフロアの各店舗がどれだけ他の入居店舗との相乗効果を得ているか、影響を与えているかの可視化を、データから実現してみましょう。これを可能にしてくれそうなのがヤフーのビッグデータです。
簡単に説明すると、Aのブランドに関心がある人は、BやCのブランドに対してどれだけ関心を持っているかをスコアにします。

店舗間の相性関係を計算するための基本的な考え方

公式サイトの閲覧や商品の購入といったデータでも可能ですが、今回は扱いやすくデータ量の多い検索行動をもとに作成してみます。
簡易的に実際のビッグデータから、各店舗とそれぞれの関係性のネットワークを作成してみたのが次の図です。互いに関心の関係性が強いものがネットワークとしてつながっています。つまりこの中では、「ノースフェイス」と「ナイキ」はお互いのユーザーの関心がかぶっている傾向にある、ということがわかります。また点線よりも実線のほうがより強いつながりがあると言えます。

※共起関係がより強い場合は実線、それ以外は波線になっています
データ:Yahoo!検索

可視化手段はいろいろな手法がありますが、このネットワーク図からもわかるように、ブランド間のスコアに基づいた関係性を作成できそうです。
では、実際に店舗にあてはめてみましょう。まずは右上の「プラダ」を起点として、ほかの入居店舗とのユーザー関心度をスコアにしてみました。

「プラダ」を起点とした場合の他入居店舗との相性度マップ

これを見ると、プラダはグッチやセリーヌとの相性度が高いことがわかります。フロア内の他の店舗との相性度マップを見た時に皆さんが思い抱くイメージと、比較的近しいデータ可視化になっているでしょうか。
もう一つ別の店舗でもやってみましょう。「ナイキ」を起点に作成してみたいと思います。

「ナイキ」を起点とした場合の他入居店舗との相性度マップ

いかがでしょうか? 今回ランダムで選ばれたブランドにはスポーツブランドが他にないため、フロア全体の他店舗間との相性度はどれも低めに出ています。

このように、ある特定店舗を起点として、そのフロア全体における、いわゆる「店舗間の相性関係」を可視化することは実現できそうです。しかし、これだけではまだ各店舗のみの評価にとどまっており、フロア全体の評価はできません。

ファッションフロア全体を評価するには

各店舗との相性関係は数値に置き換えられるとわかりましたので、これを応用すればフロア全体を評価することも可能です。さっそくフロア自体をスコアにしてみましょう。
どのように行うかというと、Aの店舗に対して他すべての店舗との相性度をスコアにして平均値をとります。それらをすべての店舗で行ってその総和の平均をフロア全体のスコアとします。

また、その作業によって各店舗がこのフロア全体に対して相性が良いのかどうかも同時に可視化できます。実際に計算してみると次のようになりました。

各店舗のフロア全体との相性度とフロア評価値

全店舗間の相性度から算出したフロア評価値は2.577となりました。また、それぞれの店舗におけるそれ以外の他店舗との相性度(平均値)も併せてフロアマップに可視化しました。
これによると、このフロアにとって「セリーヌ」がもっとも相乗効果を得ているブランドといえそうです。
しかし、このフロア評価値2.577というのがどのような数値なのか、この1例だけだとわかりにくいため、このフロアに全く関係のない店舗を入れてみた場合にどう変化するかも併せてみてみましょう。

【ファッションフロアに釣具店を入れてみる】

今回はこのファッションフロアに釣具店を入れてみます。各ブランドとの相性度はどうなるでしょうか?

「釣具店」を起点とした場合の他入居店舗との相性度マップ

かろうじて、一部のブランドとの相性度が若干高いものもありますが、やはり釣具店ですので、このフロアに入っているファッションブランドとの根本的な相性度はどうしても低くなってしまいます。
ではこのままフロア評価値も計算してみましょう。

「釣具店」を加えたフロア評価値

フロア評価値は2.577から2.424へと減少しました。21店舗ありますので、1店舗加わっただけでは劇的に数値が動くことはありませんが、カラーグラデーションに関しても見比べていただくと先ほどから変化していることがわかります。

このように、これまではおそらく数値化の難しかったフロアやモール全体といったエリアのスコア化や、入居店舗それぞれの評価といったことを行うことの可能性が見えてきました。

もちろん今は仮で1フロアとしていますが、ビルやショッピングモール、区画エリア全体でも可能なうえに、「渋谷を訪れている人のみ」といった条件や、特定の年代、属性ターゲットによる条件での評価も可能です。ビッグデータを用いたリアルな場の改善に少し可能性が見えてきましたね。

ファッションフロアを改善してみよう

ここまでは、現状の店舗に基づいた状態を可視化してみましたが、ここからはその次のステップに進みましょう。
次に行うのは最初の目的である、ショッピングフロアの改善です。いろいろなやり方があるかと思いますが、今回は単純に既存店舗を活かしたまま、すべての店舗の相性度を底上げするような、素晴らしい波及効果をもたらしてくれそうな追加店舗を入居するというイメージで考えてみましょう。

しかし、現入居店舗をベースとして、それぞれの店舗にもっともよい影響を与える(フロア評価値をあげる)候補のブランドを自分で探し出すのはとても大変です。
特定の店舗と相性が良いといった、エリアのニーズと相性が良いといった選定は可能かもしれませんが、それを目に見える形で数値化するのは大変です。また、既存の有名店舗だけではなく、最近急上昇している話題の店舗候補などを見落としたくもありません。
そこで活躍するのがヤフー独自のリスト抽出技術です。これと組み合わせることで、既存店舗を基軸にした候補ブランドを自動的にリストアップできます。
では、それを用いて候補店舗の抽出を行ってみましょう。

既存店舗を考慮した最適入居ブランド抽出分析

今回軸として、縦軸に「全体への波及効果度」、横軸に「平均ブランド相性度」を設定して散布図を作成し、最適な入居ブランドの候補抽出を行ってみました。
上記図で言うところの右上の高レコメンドゾーンにあるブランドほど、このフロアにとって良い相乗効果をもたらしてくれるブランド候補であると言えそうです。
今回は2軸でやっていますが、いくつかの変数の組み合わせによる最適店舗候補を自動で抽出することも可能です。

また、通常はファッションブランドであれば、その最適店舗候補となるのはファッションブランドですが、ヤフーのデータ量があればファッションブランド名リストから相性の良いコスメブランドや、さらにカテゴリを超えた飲食店、さらには旅行や保険商品といった異業種ものまで何でもクロスできるため、ジャンルにとらわれない候補を探すこともできます。

実際に適応してみる

先ほどの分析を用いて抽出したブランド名のなかから「ハイク」をピックアップし、フロアに追加店舗として加えるかたちで配置したうえで、そのブランド名をもとにした相性度マップを作成してみました。

「ハイク」を起点とした場合の他入居店舗との相性度マップ

すべての店舗と最高の相性度を持たせるのはやはり難しいですが、多くの店舗に対して相性度の高いブランドであることがわかります。

新規ブランド追加後のフロア評価値

また、この店舗を加えることでフロア全体相性度も2.637(前回2.577)に上昇しました。これは既存入居店舗それぞれともっとも相性のスコアがよくなる店舗を入れたことによるものです。これによって集客における相乗効果が期待できるかもしれません。

つまり、ビッグデータを用いることで、実際にお店を入れ替えることなく、事前に従来店舗との効果を検証することが可能です。またこれは出店側にも言えることで、出店先のフロアやターゲット層に対してどれだけの相性があるのかをスコアで見ることが可能になります。

ビッグデータフロア配置を改善

さて、次の改善策としてフロアの配置そのものに手を入れてみましょう。
お客様が興味あるブランドが近いほうが相乗効果が表れやすいと仮定し、相性の良い店舗同士を近づけることを行ってみましょう。もちろん、単純に相性が良いブランドを近づければいいというものではないでしょうが、一例としてご覧いただければと思います。
それぞれのブランド間の相性度の関係からお互いの近さを可視化して、それに基づいた配置へと変更してみます。ここではMDSを用いてその可視化を行います。

MDSを用いたブランド間の関係性の可視化

上記結果を用いてのフロア配置・レイアウトの変更

少しレイアウトを変更しましたが、お互いの相性度の関係から、相乗効果が高そうな店舗を近づけて配置を行ってみました。先ほども記載しましたが、これがベストな解決策というわけではないでしょうし、あえて相性がいい店舗を離して回遊性をあげるといったこともあり得るでしょうが、位置候補案の一つとして見ていただければ幸いです。

いかがでしょうか、ビッグデータを用いることで商業ビルやショッピングモールのフロア改善に活かせそうな光明がみえてきたのではないでしょうか?
ヤフーではヤフー・データソリューションというサービスも行っております。ビジネスの現場でこのようなデータを活用したいという方は、ぜひご活用ください。

Yahoo! JAPANビッグデータレポートでは、これからもさまざまな形でデータの魅力をお伝えします。今後ともYahoo! JAPANビッグデータレポートをよろしくお願いします。

ヤフー・データソリューションにも今回ご紹介したレポートを掲載しています。併せてご覧ください。
ビッグデータから最適な店舗配置を導けるか(ヤフー・データソリューション)

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