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企業情報

2017.11.29

知恵を共有する「Yahoo!知恵袋」今後の展開は?

知恵袋のサービスマネージャー 丹羽

Yahoo!知恵袋は、あらゆる事柄を質問・相談したり、自分の知識や知恵を生かして回答したりできるQ&Aサービスです。2004年にベータ版がリリースされて以来「すべての人々に知恵を共有するサービス」として、幅広い年代の方にご利用いただいています。
今回は、Yahoo!知恵袋サービスマネージャーの丹羽に、知恵袋の特徴や現在の取り組み、今後の展開などについて聞きました。

-Yahoo!知恵袋に投稿されている質問数はどれくらいですか?

2004年にベータ版がリリースされてから現在までに、およそ1億8000万件の質問が投稿されました。回答総数はさらに多く、4億4000万件以上にのぼります。
解決済みになるQ&A投稿数は、一日約3万件です。

-利用者の傾向や特徴を教えてください

Yahoo! JAPANの他サービスと比べて、若い年代の方に多くご利用いただいている傾向があります。特にアプリの利用率は若い年代のほうが高いですね。
利用者の年代別データを見ると、質問数の多い年代は20代、回答数の多い年代は40代です。回答数の多い年代のほうが高いのは、人生の先輩として人に教えたい気持ちが強いからなのかなと推測しています。

幅広いジャンルを扱っているので、利用者全体について顕著に言える特徴はありません。ただ、ヘビーユーザーのなかには、毎日欠かさず質問も回答も投稿する方もいますし、特定カテゴリー内の質問に回答するために常にカテゴリーを見張っている「住人」と呼ばれる方もいます。サービスを提供する立場で言うのもなんですが、彼らの知恵袋に対するモチベーションの高さは本当にすごいと思います。
ちなみに、サービスの使い方などについて質問できる「Yahoo!知恵袋」カテゴリーの質問に回答する方の詳しさには、私もただただ驚くばかり。「私たちの代わりにカスタマーサービスをしてくださっているのかな?」と思ってしまうほどなんですよ(笑)

知恵袋のサービスマネージャー 丹羽

-知恵袋に投稿される質問には、特徴や傾向はありますか?

大きく2つに分けられると思います。ひとつは、ある疑問に対して明確な答えを求める質問です。Q&Aサービスが出現した背景のひとつに「インターネットで検索しても自分が欲しい回答を得られない。何とか解決できないか」というニーズがありましたから、Q&Aサービスの目的に準じた質問ともいえます。
もうひとつは、実は答えを必要としていない質問。要は、自分が何かしらの決断をするために、他人の意見を知りたいというタイプです。私が見る限り、後者の質問のほうが多いように感じます。

若い世代で一番盛り上がっている恋愛相談カテゴリーには、答えより意見を求める質問が多いです。このカテゴリーの疑問や悩みって、明確な答えはないと分かっていつつも、自分だけで決めるのも不安なので他人の意見を知りたくなるんですよね。

インターネットでもある程度は調べられますが、いま自分が置かれているケースに合う回答が見つかるとは限りません。そこで、個別に具体的な質問を投げかけてさまざまな人の意見を聞ける知恵袋を活用するのだと思います。
知恵袋ではID(Yahoo! JAPAN IDまたはニックネーム)を非公開にして投稿する機能があります。そのことによりユーザーマナーの問題が指摘される一方、たとえばメンタルヘルスや病気などプライベートに関わる投稿をしたい場合「自分の個人情報が分からないようにしたい」というニーズが少なからずあります。
深刻な悩みになればなるほど、このようなニーズは高くなるのかもしれません。そういう方が知恵袋を使って少しでも役立ててくれればという願いもあります。

利用者に十分浸透した今だからこそ、品質に強くこだわりたい

-知恵袋のサービスマネージャーに就任するまでの経緯を教えてください

新卒でヤフーに入社後、しばらくは今で言うビッグデータエンジニアとして検索機能の開発やデータサイエンス業務に従事していました。
その後は技術系のリーダーやプロジェクトマネージャーを経て、検索基盤技術を取り扱う組織や音声対話サービスのサービスマネージャーを担当してきました。業務として知恵袋に本格的に関わるようになったのは、知恵袋のサービスマネージャーに就任してからです。

サービスマネージャーの前に一人のユーザーとして、まず投稿品質に課題があると感じました。多くのユーザーのみなさまからご指摘を受けている点と同じです。その初心はこれからも大事にしたいです。
これまでも品質対策を講じていなかったわけではありませんが、改善の余地がまだ多く残っていて、具体的なアプローチ方法も見えています。 Q&Aサービスを含め、いまやインターネットという情報源はわれわれの日常生活に浸透しています。だからこそ、多くのユーザーに利用していただいているプラットフォームとしての責任は果たすべきだと思います。

知恵袋のサービスマネージャー 丹羽

回答の質を高めるための取り組み

-知恵袋の品質を高めるために、どんなことに取り組んでいるのでしょうか?

たとえば、ある質問に対してより具体的かつ質の高い回答を集めるために、専門的な回答を投稿してくださる「専門家」や「企業公式」の方々にご協力いただいています。
専門家はその道のプロや士業をされている方で、プロフィールに得意分野や実績などを具体的に書いていただいています。バックグラウンドが明示されているので、閲覧する人は回答の信頼性を感じやすくなったのではないでしょうか。

企業公式アカウントは2015年から始めました。ベストアンサー率が高い企業が多い点から見ても、企業公式による回答は確実にコンテンツの品質向上につながっていると感じています。

-「企業公式」を積極的に活用されている会社の共通点を教えてください

知恵袋をうまく活用されている企業は、CS(カスタマーサービス)に非常に力を入れていると感じます。自社の商品やサービスに関する質問だけでなく、その企業が強みとするジャンルに関する質問にも丁寧に回答していらっしゃるんですよ。

企業側にとっても、知恵袋はCS強化に有用なツールとして価値あるものになっていると思います。ありがたいことに、企業のご担当者からコンスタントにお問い合わせをいただいているんです。おそらく、知恵袋を活用したCS活動を効果的だと感じていただいているからではないかと考えています。

-専門家や企業公式による回答の他に、回答の品質を高めるためにしている取り組みはありますか?

一日何万もの投稿に対して人間によるチェックには限界があるため、人工知能技術を活用した品質向上の取り組みを強化しています。
たとえば、これまでに蓄積された膨大なQ&Aデータを使って機械学習(ディープラーニング)による投稿内容の種別を自動判定できる仕組みを開発しています。
他にも検索ランキングや投稿のカテゴリ自動判定など、品質だけでなくサービスを良くするために人工知能技術を応用できる部分は数多くあるので、段階的に進めていきたいと考えています。

また、知恵袋のコアユーザーから組織される「Yahoo!知恵袋サポーターズクラブ」を先日設立したところ、特にサービスを愛して使っていただいているコアなファンのみなさんが多く登録してくださいました。みなさんから「知恵袋を良くするのにぜひとも貢献したい!」「何か協力できることはありませんか?」という非常にありがたい声をたくさんいただいています。
設立して間もないですが、今後はサポーターズクラブの活動を通じて、知恵袋ユーザーのみなさまの力もお借りしながら、投稿の品質向上やサービスの信頼性を上げていけるような取り組みもしていきたいと考えています。

知恵袋のサービスマネージャー 丹羽

知恵袋の強みを維持しながら、新しい展開も見据える

-サービスが始まってから現在まで、知恵袋のあり方に変化はありますか?

インターネットの利用方法が変化した影響を受けて、知恵袋のあり方も変化しなければいけないと感じています。実名を公開するSNSの利用が増えた影響は大きいです。インターネット上で実名を出すことへの抵抗は、10年ほど前と比べて薄れてきていますよね。

米国の「Quora」や中国の「知乎(Zhihu)」といった海外のQ&Aサービスの流れを見ると、最近では実名制によって投稿品質を重視したサービスが台頭しており、市民権を得ています。質問も回答も実名と経歴が表示されて投稿されるので「こういう人が言うなら信用できる」と感じるユーザーもいると思います。
あるテーマに対するQ&Aがあったとして、そのテーマに精通していそうな人物の投稿とそうでない投稿ではユーザーの受け取る印象は少なからず違うのではないでしょうか。

しかし、たとえば20代以下の若年層が実名制で専門性のある回答ばかりが並ぶ世界を望むか、というと必ずしもそうではないような気がします。ユーザーの年代や属性によっても居心地のいい場の雰囲気は微妙に違いますね。
両方の良さをサービスとしてうまく取り入れることができれば、ユーザーにとっても今以上に価値を感じてもらえると思います。

-知恵袋でも、実名投稿が導入される可能性はあるのでしょうか?

知恵袋はミッションに「すべての人々に知恵を共有する」と掲げていますから、さまざまな人が安心して使いやすい場にする必要があると考えています。すでに知恵袋では専門家の方が実名で投稿する仕組みがあり、その回答の質は高いものが多いです。

一般のユーザーやセミプロのようなユーザーに対しても投稿の信頼性を担保するために実名制を取り入れるのは選択肢の一つとしてありえます。そのためにはユーザーに価値を感じてもらう必要性はあります。

インターネットのサービスとはいえ、最終的には「人」に帰結すると私は考えています。

画面の中でQ&Aの文章をやりとりしていますが、インターネットを介した向こう側にはユーザーという「人」が必ず関わっています。いまの知恵袋ではプロフィールページは存在するものの、投稿者の人となりが見えづらいサービスとなっており、ユーザーの個性化はもう少し検討していきたいと考えています。
人が質問して人が回答するといった交流がある場では、お互いのパーソナリティーが分かった上でやりとりできることで、匿名投稿とは違った安心や信頼を得られる一面もあります。そう考えると、知恵袋に集まる「人」のパーソナリティーを目立たせて、コミュニティーのような形にしていくのもアリなのではないかと思います。
いずれにしても、投稿を見たユーザーが判断するために使える情報は多いほうが良いと思いますし、信頼が集まっているユーザーには今以上に周りから評価されるような仕組みを導入したいと考えています。

知恵袋が「人生が変わるきっかけ」になるとうれしい

-今後知恵袋に導入したい機能や、取り組んでいきたいことを教えてください

ユーザーにとってもっと「自分事」にできるサービスにしていきたいと思います。
利用者一人ひとりの趣向にあったページを表示させるとか、利用者にとって適切なタイミングで質問や回答が通知されるとか、パーソナライゼーションによってできることの幅が広がると思います。
ユーザーの心理としては「質問や回答をするのは面倒だけど、みんなの考え方や意見はちょっと知りたい」というものが圧倒的に多いと思います。
ですので、より身近にQ&Aサービスを感じてもらうことで、インターネットを使って悩みや疑問を解決できたり、人々の知恵や意見を効率よく活用できたりするようなプラットフォームにしていきたいですね。

先ほどもお話しましたが、知恵袋全体の品質をもっと高めていきたいです。実現するための施策は、既に具体的に進んでいることから、まだ構想段階の理想的なことまで、山のようにあります。
海外ではQ&Aサービスに質を求める傾向が強くなっているからなおのこと、知恵袋そのものの信頼性向上のために、品質をより一層高めるべきだと考えています。

-これから、知恵袋をユーザーにとってどんなサービスにしていきたいですか?

ユーザーのみなさんにとって「人生が変わるきっかけ」になるサービスにしていきたいと思っています。過去にも利用者の方から「知恵袋の投稿をきっかけに起業した」などといった声をいただいたことはありますが、ますます多くの方の人生に影響を及ぼすことができるとうれしいですね。

多くの方は、疑問や悩みを解決したくて知恵袋にたどり着きます。そこに集まるコンテンツが、具体的な行動に移せたり、新しい考え方に気づけたり、その人が何かしら良い方向に進む後押しになるといいなと思います。
利用者の方にとってますます信頼できる場になるよう、さまざまな改善に取り組んでいきますので、今後のYahoo!知恵袋にぜひご期待ください!

知恵袋のサービスマネージャー 丹羽

【関連リンク】

文/筒井 智子(リベルタ)、松本 沙織
写真/広瀬 美咲、田中 里紗

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