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2016.03.25

歩くだけ!? 驚くほど単純なデータから 人間関係を可視化してみた

歩くだけ!? 驚くほど単純なデータから 人間関係を可視化してみた

こんにちは、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームです。
今回はYahoo! JAPANが誇る頭脳集団「Yahoo! JAPAN研究所」より、興味深い研究内容をお届けいたします。

突然ですが、人と人との関係を普段の生活で意識することはありますか?
きっと多くの人はそれほど意識していないと思いますが、学校でも会社でも家でも人との繋がり無しに生きていくのはほとんど不可能です。 私達は一生の中で何度も他者との関係を新しく作ったり、再構築したり、リセットしたりしながら生きています。
そんな、目に見て確認することが難しい「人間関係」という概念をデータで可視化できたらどうでしょう?

「組織の関係」を可視化するための最適な方法は?

そのような問いかけに対してたくさんの人がこれまでも挑戦してきました。
例えば、Bluetoothや赤外線を使って可視化しようという取り組みもその一つです。Bluetoothでは端末(センサー)同士が近くにいたら反応するように設定したり、赤外線であれば直接向かい合った際にデータを取とったりすれば、その反応回数や時間を計測することが可能になります。このデータを用いると、AさんとBさんは同じ組織であるとか、AさんとCさんはまったく交流がないなどの関係図を可視化できます。

(図1)センサーを用いたデータ取得方法の一例

センサーを用いたデータ取得方法の一例の画像

しかし、Bluetoothや赤外線を発信し続ける専用デバイスを常に持ち歩くのは面倒です。また、センサー同士が常に正常にコネクトする必要があるため、電波がつながりにくい場合や片方に不具合があった場合に両方でデータが取れないなど、欠点が多いのも事実です。

そこで、Yahoo! JAPAN研究所は考えました。

  • 身につけていることを意識せず
  • もっと容易にデータを取得でき
  • 個人情報が端末から発信されることの無い

そんな方法は無いものだろうか。すると、あるひとつのアイディアがひらめきました。

歩数計です。

歩数計のデータで人間関係がわかる?

そもそも歩数計なんて持ってないんだけど、と思っていませんか? 実はiPhoneをはじめ、最近のスマホには歩数計機能が備わっています。 そのため、歩数計のデータは誰もが持っているのです。しかし、単に歩数をカウントするだけのこの機能で、どうすれば人間関係がわかるのか。
それを理解するために、具体的な事例に歩数計のデータを重ね合わせてみましょう。

(図2)歩数計の波形による比較

歩数計の波形による比較の画像

上記はAさんとBさんが業務フロアから会議室に行って、戻るまでの歩数計データです(データはサンプルです)。この場合、歩数計の波形を見るとAさんとBさんは同じ波形を描いています。動きが無いタイミングも同じなので、この二人は同じタイミングで行動していたことが推測できます。また、Cさんは波形がまったく異なっており、会議中にも移動が発生していることから会議に参加していないことが推定できます。

次にD、E、Fさんの3人のお昼の歩数を見てみました。(図3)

(図3)歩数計の歩数による比較

歩数計の歩数による比較の画像

DさんとEさんはいつもお昼にほぼ似た歩数が続いていることがわかります。つまり、二人はお昼にランチを一緒にとっているのでは? と推測できます。また、よく観察するとEさんの歩数はDさんの約0.9倍になっていますので、歩き方の違いまでもが数字のみのデータでわかるのです。

これらの詳細については以下の論文に詳しく解説してありますので、ぜひご覧ください。

実際に試してみた

では実データで実験した場合、想定どおりうまく人間関係を可視化することができるのでしょうか? 実際にやってみました。

3つの組織(某大学、Yahoo! JAPAN研究所、Yahoo! JAPAN開発部)のデータを完全に匿名化して個人情報を特定できないようにした上で、紹介した方法を用いて関係図を書いてみました。

(図4)歩数計データから作成した関係図

歩数計データから作成した関係図の画像

一つ一つの円が人を表しており、データ分析の結果繋がりがあると判断された人同士は線で結ばれています。また太い線はより強い結びつきを表します。
しかし、これを見ただけでは本当に現実の人間関係を可視化できているのかを判断できません。そこで、今回の実験に協力していただいた人からアンケートを取り、その属性を当てはめてみると次のようになりました。

(図5)リアルの関係を重ね合わせた関係図

リアルの関係を重ね合わせた関係図の画像

同じ組織内ではお互いの線同士が強く結び付き合っていることがはっきりわかります。また、組織を超えて繋がっている人もきちんと関係性が可視化されており簡単に把握できます。
このように、歩数計から得られた活動量という一見なんでもない情報だけで、確かに組織内の人間関係が可視化できるなんて面白いことだと思いませんか?

最後に

人間関係を可視化しようとした場合、これまでは前述したようにBluetoothなどの専用センサーを持ち歩いたり、何らかの手段で位置情報取得して可視化したり、アンケートといった調査データなどが必要でしたが、 歩数計のデータを使った場合はそれらの追加データをまったく必要とせず、また追加コストをかけたり専用端末を常に持ち歩くなどの手間もないため、ローコストかつ手軽でありがならグループの人間関係の把握や、それに伴うパフォーマンス評価などを実現できます。

しかし、この方法も万能ではありません。組織やグループといった限られた集団の人間関係をおおまかに可視化することができますが、人数の多い集団などは難しいため、日本全体の人間関係などを可視化するのはこの手法ではほぼ不可能です。
今後はこれを発展させて、より詳細な人間関係の把握や、人間関係から組織やパフォーマンスを評価するような研究を進めていく予定です。
詳細な人間関係の把握というのは、人間関係の種類を特定しようという研究です。同じ人間関係でも、オフィシャルな関係か、プライベートの要素が強い関係か、などを特定しようというものです。この研究成果につきましては、こちらの論文をご覧ください。人間関係からパフォーマンス評価とは、こういった人間関係の様子が組織やそこに属する個人のパフォーマンスと関係があるのではないか、という仮説を明らかにする研究です。こちらは、また成果が出来次第、ご報告させていただきます。

いかがでしたでしょうか。今後とも、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」をよろしくお願いいたします。

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