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2015.11.27

「新しい技術」はどうやって発明される? ヤフーの一大プロジェクト開発者に聞く

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今年5月のスマホ版Yahoo! JAPANトップページとアプリの全面リニューアルの際には、ヤフー独自の「新しい技術」がたくさん生まれました。中には特許出願中のものもあります。その「新しい技術」はどのようにして生まれたのでしょうか。開発チームを代表して、データ&サイエンスソリューション統括本部の佐々木さんと、マーケティングソリューションカンパニー開発本部の禹(ウ)さんに話を聞きました。
(左から佐々木さん、禹さん)

「良いサービスかどうか、ユーザーに常に問う」

- 5月のYahoo! JAPANトップページとアプリのリニューアルでは、ユーザーが使えば使うほどそれぞれの興味に合った記事が自動でタイムライン上に流れる(※写真参照)、というのが大きな特徴です。そもそも開発者のお二人はどのような思いでこの技術開発に挑まれたのでしょうか?

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(※トップページの画面。「あなたへのおすすめ」ではそれぞれのユーザーの好みに合った記事を配信しています)

佐々木:
「ヤフーを訪れると知りたいことがすべてわかり、課題も解決できる」――ひとりでも多くのユーザーにそう思ってもらえる世界を目指しています。今の世の中で「ヤフーがないと困る!」と思ってくれるユーザーはまだ少ないのが現状です。タイムラインでそれぞれのユーザーに向けた情報を配信していくことで「なくては困る」存在になりたかった。

禹:
ヤフーのトップページを「日本の情報インフラ」にしたいんです。なにかあったときにはすぐにヤフーを見てもらいたいですし、そのためにはヤフーの情報は常に信頼できると思ってもらいたい。ユーザーが必要とする情報はもちろん、必要と認識していなくても実は知っておいたほうがいい情報などもきちんと伝えていきたいと思っています。

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(データ&サイエンスソリューション統括本部 佐々木さん)

- 「それぞれのユーザーに向けた情報」を配信する技術がどのようにして生まれたのか、具体的に教えてください。

佐々木:
今回、ユーザーが欲しい情報や世の中の重要な情報をタイムライン上に配信するためのロジックを開発するにあたって、データサイエンスを活用しています。私たちがまず行ったのは、データの収集作業です。ユーザーの行動や好みを知るための膨大なデータをためる下準備が必要でした。コツコツとデータ収集をして、ようやく配信ロジックの開発に取り組めた。データサイエンスって実はわりと地味な世界なんですよ(笑)

- 最初にデータを収集してユーザーの傾向や好みを分析し、それを技術開発に生かした、というわけですね。

佐々木:
はい。また、5月にリニューアルをしてからも、コンテンツ配信部分などでは何度もトライアンドエラーを繰り返しています。実は、リニューアル直後から半年間でトップページの内容もだいぶ変わっているんです。どんなコンテンツをどんな配分でユーザーに提供するべきかは、やはり実際に提供してからでないと分かりませんから。良いか悪いかはユーザーがすぐに教えてくれます。

- 「ユーザーが教えてくれる」というのは具体的にはデータに表れる、ということでしょうか?

佐々木:
はい、クリック数はもちろん、ページに何分間滞在しているか、ページを閉じた後どれくらいの時間が経過してから再訪しているかなど、全部データでわかります。提供するサービスの良し悪しの正解がわからない中で、比較的いろいろと試行錯誤しやすいインターネットの世界は恵まれているなと思いますね。

禹:
そこがインターネットの醍醐味(だいごみ)ですよね。ユーザーに提供して、反応を見て、改善して、また反応を見て……を短いスパンで繰り返せる。 
また、スマホ時代になってからインターネットの使い方も多様化していて、どんな場所でどんな風に使われているかなど、取得できるデータの種類もどんどん増えています。さまざまなニーズに対応できる環境になりましたね。

佐々木:
たとえばスマホでは画面をスクロールしますが、ある記事の見出しが何秒間ユーザーの画面上に表示されていたかというデータも取れるんですよ。ぱっと流される記事とゆっくり流される記事の違いがわかる。表示秒数によって、クリックしていなくてもタイトルは読んでいるんだな、などわかるわけです。技術開発におけるヒントが増えて、世界が変わりましたね。

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(マーケティングソリューションカンパニー開発本部 禹さん)

- リニューアル後もユーザーの反応を見てどんどん進化を続けているということですね。

佐々木:
正直、どんどん改善を積み重ねて良いサービスを作れているかというと……個人的には「まだぜんぜん」です。

禹:
まだまだですね、100点中10点ぐらいですね ……! あと90点頑張りたい(笑)

- まだ10点! 道のりは長いのですね。

佐々木:
ユーザーに良いか悪いかを問うための挑戦がまだ少ないです。もっと試行錯誤のスピードを上げたい。5月に大きくリニューアルはしましたが、結局終わりはないんだと思います。常にリニューアルし続けている感覚ですね。

- 今回、ユーザーのニーズを何度も検証し続けて「新しい技術」が発明されました。これらの技術は特許の出願に結びついたものも多いと聞いています。

禹:
結果として特許を申請できた技術はありましたが、あくまで「ユーザーにとってこういう機能があると便利だろうな、使いやすいだろうな」という気持ちしかありませんでしたね。

佐々木:
そうですね、「新しい技術が生まれた」というのは結果論で、ユーザーが使いやすいサービスを追求したら新しい技術が生まれていた、という感じですね。特許を取得することは意識していなかったです。

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- 最後に、今後の抱負を聞かせてください。 

禹:
「ヤフーのサービスって本当にいいね!」と言ってもらえるサービスを作っていきたいです。先日、あるユーザーがヨーロッパのニュース記事を読んだ直後にヨーロッパ製の化粧品を買っているというデータを見つけました。そのユーザーの二つの行動心理にはどんな関連性があるのか、たくさんのデータをつなげることでユーザーの1日の行動をもっと知ることができ、より便利なサービス作りに生かせるようになるのが楽しみです。

佐々木:
ヤフーのミッションである「課題解決」につながるサービスをつくっていくためにも、私たちの技術力をもっと上げないといけない。調べるのに2時間かかっていたことが3分でわかるようになったら、できることも変わってくる。もっと高い技術力、高いデータ処理力を実現していきたいですね。

【番外編】「特許を取れる技術」とは?

5月のトップページリニューアルの開発に携わった佐々木さんと禹さんいわく「特許は意識していなかった」とのことですが、特許の専門家からみて「特許を取れる技術」というのはどのようなものなのでしょうか? 特許部の楽山さんに聞きました。

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(特許部の楽山さん)

「課題を解決しようとするとき、特許は生まれる」

実際に特許ねらいのアイデアの相談もたまに受けますが、みなさんが普段業務でやっていることが特許につながる、というケースがほとんどですね。佐々木さんと禹さんが言っているとおり「サービスをもっと良くしよう」という強い思いが結果として新しい技術を生み、特許につながる。ほんとうにユーザーのために親身になって考えた技術のほうがより価値の高い特許になるんです。課題を解決しようとするときに、特許は生まれるんだと思います。

トップページのリニューアルは大きなプロジェクトだったので、エンジニアのみなさんがたくさんの課題を解決すべく日々頑張っていました。みなさん謙虚な方が多く「エンジニアとしての業務を行っているだけ、特別なことはしていない」と謙遜するのですが、どんどん新しい技術が生まれるインターネットの世界では、開発者自身が気付いていないところで特許に値する技術が生まれていることもあります。特許部の立場から、今回その気付きなどを積極的に促したことで、コンテンツ配信ロジックやユーザーインターフェースなど20件以上の特許出願に結びつけることができました。

あくまでユーザーのための技術開発ではありますが、自分たちの技術開発が世の中の新しい発明に値している、という実感を持ってもらうための啓発も大切だと思っています。(談)


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