こんにちは、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームです。
私たちはこれまで、2013年の参議院選挙予測をはじめ、ビッグデータによる選挙予測に何度か取り組んできました(参考「ビッグデータが導き出した参議院選挙の議席予測」)。参議院選挙予測では、いくつか課題が残ったものの、90%以上の精度で各党の獲得議席数を予測することができました。
次の国政選挙は2016年に衆議院選挙が予定されています。次の国政選挙も前回と同じモデルで予測することができるのか、現在調査している段階です。本レポートは、そこからわかった興味深いことを3つご紹介します。
本題に入る前に、参議院選挙予測に使用した予測モデルについて、簡単に説明をします。検索数データをもとにしたインターネット上の注目度と得票率の相関をベースに、政党ごとに以下の2種類の補正をかけています。
- (1)政党ごとの注目度の得票へのつながりやすさ
- (2)政党ごとの注目度の選挙直前の盛り上がり度合い
(図1)予測モデルで用いた2つの補正
※公示中と公示前の期間を同じ日数に合わせて算出
(1)だけで補正したものが「相関モデル」、(1)と(2)で補正したものが「投影モデル」です。
1. インターネット上の注目度と得票率
そそもそも、インターネット上の注目度と得票率はいつも相関しているのか、過去5回の国政選挙を調べてみました(諸派を除く)。
(図2)のとおり、5回分の選挙をまとめてみたところ、注目度と得票率には高い相関がありました。また、各選挙でも同様に高い相関が見られました。この結果から、注目度による得票率の予測は、基本的に有効であると考えられます。
(図2)過去の国政選挙の政党別注目度と比例区得票率の相関
(%、2007年~2013年の5回分結果より)
- 資料:
- 「Yahoo!検索」データ(対象期間:公示期間)
2007年参院選、2009年衆院選、2010年参院選、2012年衆院選、2013年参院選の比例区得票数結果(諸派除く)
2. 注目度と得票率の政党別の特徴
注目度と得票率の相関は政党別でも同じように見られるのか調べてみると、ひとつ気づきがありました。(図3)のとおり、自民党や民主党では注目度が高いほど得票率も上がるのですが、公明党は、注目度の高低にかかわらず、衆院選で約12%、参院選で約14%と、得票率がほぼ一定であるというユニークな特徴がありました。これは、公明党が常に同じ数の票を得るというわけではなく、全投票者の中の公明党支持者の割合が一定ということを示しています。興味深い結果といえるでしょう。
(図3)過去の国政選挙の政党別注目度と比例区得票率
(%、ヨコ:注目度、タテ:得票率)
- 資料:
- 「Yahoo!検索」データ(対象期間:公示期間)
2007年参院選、2009年衆院選、2010年参院選、2012年衆院選、2013年参院選の比例区得票数結果(諸派除く)
3. 政党に吹く「風」の可視化
次に、政党ごとの注目度の「盛り上がり度(公示中の注目度÷公示前の注目度)」(図1参照)を調べました。(図4)は、自民党の2010年参院選と2013年参院選における注目度の日別変化を表したものです。それぞれの選挙で、注目度の盛り上がり度合いが違うことがわかります。
(図4)自由民主党の注目度
(2010年参院選と2013年参院選、注目度は公示17日前を1とした場合の指数)
- 資料:
- 「Yahoo!検索」データ
過去5回の国政選挙の盛り上がり度を政党別にまとめたものが、(図5)です。
(図5)選挙前の注目度の盛り上がり度の変化
(指数、2007年~2013年の5回分結果より)
- 資料:
- 「Yahoo!検索」データ
2007年参院選、2009年衆院選、2010年参院選、2012年衆院選、2013年参院選
基本的に、盛り上がり度はどの政党でも選挙ごとに波打っていることが見てとれます。しかも、その選挙で大勝した政党や注目された政党は盛り上がり度が高い傾向がわかりました。例えば、民主党政権が誕生した2009年衆院選では、自民党・民主党ともに大きく盛り上がっており、両党が激しくぶつかり合った選挙であったことがわかります。また、2013年参院選は、明らかに自民党のみが大きく盛り上がり、大勝した背景がうかがえます。
ここから、注目度の盛り上がり度は、その選挙における政党への「風向き」の強さを示していることがわかります。「風向き」という、一見目に見えないものを量的に可視化しうることがわかったので、今後の選挙予測でも更に活用していければと考えています。
以上、まとめると、次のことがわかりました。
- 国政選挙における政党の注目度と得票率は基本的に相関する
- 政党別に見ると、注目度が得票率に関係しない政党もある
- 注目度の盛り上がり度は、政党への「風向き」の強さを示す
いかがでしたでしょうか。今後とも「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」をよろしくお願いいたします。