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2021.12.20

コロナ禍に入社した新卒社員たちが立ち上げた データコミュニティ「Sparkler」で取り組んでいること

AIテックカンパニーを目指すヤフー。そのためには社員のデータへの意識を強める必要があります。社員の誰もが気軽にデータと触れ合い、それをエンジニアリングやビジネスに生かす視点を養う、全社横断データコミュニティ「Sparkler」が活動を本格化させてきました。リーダーシップを発揮しているのは、それぞれのサービスや領域を担当する新卒2~3年目のエンジニアたち。若手社員がなぜそれほど熱心にコミュニティ作りに取り組んでいるのか、その想いを語ってもらいました。

プロフィール

宇城のプロフィール画像
宇城 毅犠
2019年新卒入社。バーティカル統括本部プロダクション1本部。「Yahoo!知恵袋」のフロント/バックエンド開発、開発ディレクションを担当。2020年4月にデータコミュニティ「Sparkler」を立ち上げた。
高見のプロフィール画像
高見 玲
2020年新卒入社。メディア統括本部メディアプラットフォーム本部。メディアデータのETLや可視化基盤の開発、「Yahoo! JAPANトップページ」記事入稿・記事選定作業を支援するプロダクトの開発などを担当。
セーリムのプロフィール画像
Saelim Natthawute(セーリム・ナッタウット)
タイ出身。日本で大学院教育を受ける。2020年新卒入社。テクノロジーグループサイエンス統括本部。検索意図判定APIの開発を担当。データコミュニティには2021年4月から参加。
中津のプロフィール画像
中津 龍星
2020年新卒入社。ショッピング統括本部プロダクション2本部。「Yahoo!ショッピング」の注文・決済処理のバックエンド開発を担当。今期から同統括本部ビッグデータ部の仕事を兼務。データコミュニティには黎明期の2020年末から参加。
干場のプロフィール画像
干場 未来子
PD統括本部 コーポレートPD本部
マーケティングソリューション事業で営業、エデュケーション、プロダクトマーケティング、マーケティングチームなどを経て、2016年に人事へ異動し、採用ブランディングを担当。

データ民主化を目指した、誰もが参加できるコミュニティ作り

干場の顔画像

社内で気軽にデータについて勉強し、語り合えるコミュニティ文化が醸成されていることは、AIテックカンパニーを目指すヤフーにとって必須の条件と言えます。新卒で入社して2年~3年目の若手エンジニアとしてそれぞれ異なる部門に所属している皆さんから見て、データの可視化やそのビジネス活用について、現状のヤフーはどのような状況にあると考えていますか?

宇城の顔画像

私が2019年に入社した当時、データを扱うのはデータ分析やデータ可視化の知識やスキルを持つスペシャリストがほとんどで、それ以外の方はデータに対する関心がまだ低いという印象を受けました。なかにはデータへの関心が高い部署もありましたが、部署によって粒度の違いがある。データ活用事例が全社的に共有されていない点も気になりました。
しかし、これからは誰もがデータに基づいた意思決定ができた方がいい。データを扱う職種ではない人も、そのスキルを身につけることがヤフーにとってもプラスになると感じました。データのスペシャリストと一緒に、データ関連のスキルアップができる場をもっと増やしたい。そして、誰もが参加できる自由な社内コミュニティとして育てたいと考えるようになりました。

宇城のトーク中画像
▲バーティカル統括本部 宇城 毅犠
セーリムの顔画像

私はデータを扱う専門部署である、サイエンス統括本部に所属しています。そのなかのサイエンス本部ではデータを活用したさまざまな技術開発が行われていますが、その成功事例、失敗事例は部署内でしか共有されていない。
最近はサイエンス統括本部だけではなく、ヤフーのあらゆるサービスで機械学習を使って、横断的にデータを活用していく動きがあります。そのためには事業内容を越えた知識の共有が不可欠なので、そういう場を作りたいと思いました。

高見の顔画像

私も知見の社内共有という点に関しては、同じような思いを持っています。私が所属するメディアプラットフォーム本部は、データ分析のスキルを持つ人財は多いのですが、そのノウハウが社内で共有されていない。これは大きな機会損失ですよね。
例えば、機械学習のワークフローを管理するエンジンがいくつかあるのですが、こちらのチームはAというエンジンを使っているが、別のチームはBを使っている。当時はどちらも全社的なサポート体制がなく、ナレッジが分散している印象を受けました。もっと全社的に知見を共有すれば、使っている技術の違いも含めて理解が進むし、新しい選択もできるはずなんです。
もう一つ、僕自身が大学でデータ可視化を専攻していたこともあり、ヤフーはもっと可視化という技術が実務で活用されていると期待していました。ところが、そのナレッジがあまりたまっておらず、データ活用の準備はできているけど、その先は個人で対応するしかないという状態でした。
もっと社員のスキルを底上げして、データを収集して整えるところから、データの可視化まで一気通貫で全社的に活用できれば、ヤフーは国内随一のデータ活用企業だと胸を張って言えると思ったんです。データ可視化については、エンジニアとしての知識も生かして会社に貢献できることはないか。そう考えたことも、データコミュニティ作りに関わりたいと思った理由の一つです。

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▲メディア統括本部メディアプラットフォーム本部 高見 玲
中津の顔画像

私はショッピング部門でサービスの開発をしているので、企画側から「こういう機能を開発してほしい」と依頼されるケースが多いです。しかしときには、その機能がなぜ必要なのか、どういう効果があるのか、データによる裏付けが曖昧であったり現場に伝わっていなかったりする場合があります。
もちろんデータを使った意思決定・施策立案は進んでいますし、全体としてデータに対する意識は少しずつ変わってきていますが、まだまだ一部に限られていると思います。このコミュニティを通して、そうした社内の土壌改善をより促進し、一人でも多くデータに関心を持ってもらいたいと思い、運営に参加することを決めました。

オンライン輪読会をきっかけに、人と人がつながっていく

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皆さんそれぞれが課題意識を持っていたわけですが、所属部署が異なるうえに、コロナ禍の影響でリモートワークが進み、リアルに出会う機会がなかなかありませんでした。
リアルに顔を合わせたのは、今回の座談会が初めてとのことでびっくりですが、社内のオンライン勉強会やLT(ライトニングトーク)会で知り合い、先行するコミュニティ活動に参加するなかでつながっていったと聞いています。
その一つが、CTOである藤門さんの呼びかけに応えて、宇城さんが主催したデータ可視化についてのオンライン輪読会だったそうですね。

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▲PD統括本部 コーポレートPD本部 干場 未来子
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はい。輪読会では、2020年の8月から9月にかけて、『データ視覚化のデザイン』(永田ゆかり、SBクリエイティブ、2020)という本を読みました。
エンジニア、デザイナーに限らず、営業職の人も含め約80名が参加。この開催告知はヤフーの全社掲示板に流れました。人事や労務関連などのお知らせを含めて一日何件もの告知が流れる掲示板でその情報をキャッチしたのは、このテーマに関心があった人に限られたようです。
輪読会では、実際に業務でデータ可視化に関わっている人が、本に書かれていることのなかで参考になる部分を実例とともに解説しながら読んでいく。データに対して知識のない人でもなるべく入ってきやすい設計を心がけました。

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大学で学んだ可視化に関する知見を仕事でも生かしたいと思っていたので、迷わず参加しました。なにより担当業務内だけでなく、他部署の人たちとつながることができる。それが面白かったですね。そこで知り合った宇城さんから、「社内にデータコミュニティを作るので、運営をやりませんか」というお誘いをもらい、参加したわけです。

高見のトーク中画像

Sparklerは「線香花火」。社内の人財に光を当てる

宇城の顔画像

2020年当時はまだ、データコミュニティ「Sparkler」の名称はついていませんでした。ヤフーの技術や事例を積極的に社外に発信する「Developer Relations」という組織の支援を受けて開催されたLT会が始まりでした。
また、先ほど話に出た輪読会をきっかけに「Bonfire Data Analyst」というオンラインイベントも開催されています。「Bonfire」はヤフーが対外的に主催する技術・デザインコミュニティで、「Bonfire Android」「Bonfire iOS」などいくつかの分科会があり、随時イベントを開催しています。

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セーリムの顔画像

「Bonfire Data Analyst」もその一つで、2021年5月に開催された4回目のイベント(#4)は、「人々の行動変容のためのデータ可視化」をテーマに、ヤフーのグラフィックプロジェクトマネージャーの金原洋子さんや、東京大学の渡邉英徳教授など外部の識者を招きました。
「Sparkler」は「Bonfire」の弟分のような位置付けです。「Bonfire」が対外発信をベースに企画されているのに対して、「Sparkler」は社内向けを意識しているという違いがありますが、両者の運営に同時に関わる人もおり、その連携は密に行われています。
ちなみに「Bonfire」は英語で「かがり火」という意味。ヤフーが掲げるかがり火の下に、内外の人が集うイメージ。一方、「Sparkler」は「線香花火」と訳されることもありますが、もう一つ「才能のある人たち」という意味もあります。ともに「輝く」というニュアンスでは共通しています。

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▲テクノロジーグループサイエンス統括本部 セーリム・ナッタウット
宇城の顔画像

データ領域における社内のすそ野を広げるための恒常的なコミュニティとして、「Sparkler」という名前をつけたのが、2021年4月ですね。この時、データ関連とは少し離れて「2020年新卒入社社員の1年を振り返る」をテーマに社内LT会を企画しました。そこに登壇したのがセーリムさん。彼のLTが参加者に大好評だったんです。

セーリムの顔画像

2020年新卒社員は、入社早々リモートワークになった特殊な世代。ヤフーに入社する前は、優秀なエンジニアの方々と一緒に働けるのは、最大の“福利厚生”だと思っていました。
しかし、リモートワークでは先輩社員たちとリアルにコミュニケーションができない。もちろん、ZoomやSlackなどのコミュニケーションツールが充実しているので、業務に影響することはないのですが、リアルに会えないというのは個人的に少し残念だったんですよ(笑)。だからこそ、僕らは自ら情報を発信して、社内に人脈を広げ、ヤフーに蓄積されているさまざまな技術や知識を吸収しようじゃないか、みたいな話をしたら、かなりの反響がありました(笑)。

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ざっくばらんな本音トークがライトに聞けるのも、「Sparkler」の魅力ですよね。データ利活用の知識や技術、経験がある人の苦労話や裏話も堅苦しくなくライトに聞ける。一方で、なんとなくデータに興味があって、そんなにデータ利活用の経験はないけれどデータの知見を吸収できる場所や発信できる場所がほしいと思っている人たちも、気軽に参加できる。仕事でデータに日頃関わっている人もそうでない人も、データを活用してこんなことができるかもしれないといった手がかりや人脈が、職種・部署をまたいで得られるコミュニティだと思っています。

中津のトーク中画像
▲ショッピング統括本部 中津 龍星
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イベント開催時間も1時間に限っています。立ち上げ当初は登壇者が4人くらいいたのですが、時間が足りず、質疑応答の時間も確保できない。最近はもう少し数を減らして、ゆとりを持たせようとしています。ご飯を食べながら聞いてもらっていい。アーカイブも残しているので、いつでも見直すこともできます。

オンラインコミュニティのメリットとデメリット

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「Sparkler」の運営者も増えて、現在は7人体制だそうですね。最近の活動についても聞かせてください。

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2021年6月には「MLOps(機械学習用のDevOps)」についての勉強会を開催。9月にはフリーテーマで、登壇者は学生時代の研究の話や、データを量として分析することも大切だけど、同じくらい質のデータ分析も重要だという話をしました。
毎回、数十人規模の参加者があります。2021年11月の会では参加者が300人を超え、世界最大の機械学習コンペティションプラットフォーム「Kaggle」について、出題の傾向と対策や、コンペに勝つためのテクニックなどを紹介しました。

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運営開始最初は登壇者を探すのに苦労しましたが、最近は自ら「このテーマで話をしたい」と手を挙げる社員も増えてきました。加えて、開催後のアンケートにも「こういうテーマなら自分も話ができる」と書いてくれる人も増えました。

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オンライン開催のメリットは場所の制約がなく、地方拠点の社員も気軽に参加できること。会議室の確保や場所移動の負担がないため、開催時間の融通も利く。結果として、時間の制約もほとんどなくなりました。ただリアル開催の場合は、会場の雰囲気から登壇者のプレゼンへの理解度や関心度がある程度わかりますが、オンラインではこれが難しい点がデメリットと言えます。
また、社内掲示板だけでは、データに関心のない人に告知が届かないジレンマがあります。工夫次第で「Sparkler」の社内認知度をもっと高められるはずなので、どう向上していくかという課題もあります。

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オンラインは、登録したり、Zoomを立ち上げたりなど、能動的に参加しないといけないですよね。リアル開催の場合、業務終了後に勉強会がたまたまやっていてふらっと立ち寄る、たまたますれ違った知り合いから当日開催の勉強会を知って立ち寄ってみるなど、受動的に参加できることがメリットでした。そのようなメリットを持った勉強会が望ましいのですが。

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欧州ではセミナーや学会もハイブリッド型、つまり300人とか集まってパーティーもするけれど、発表内容はオンラインでも配信するというような形になっていますね。そういう形も、今後は検討していかなくてはいけないと思っています。

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参加者の反応をどうやって把握するかは、たしかに難しいですね。いまのところはアンケートやチャットで声を拾っています。運営側が質問を募っても、しばらく何も出てこないこともある。幸い、運営者がそれぞれ専門分野が違うので、自分の得意なテーマに近い登壇者には積極的に質問しています。
一方で、僕らには本来の業務があります。イベントを盛り上げるためにパワーをかけすぎても楽しくないし、主務にも影響が出てしまう。そこが悩ましいところです。

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質疑を登壇者に回答いただくだけでなく、われわれファシリテーターがその内容を膨らませて質問者にお返しすることで、登壇者と聴講者の間でコミュニケーションを促すような試みもやりましたね。

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僕たちはこうした困難ななかでもコミュニティ運営のスキルを磨き、オンラインLT会の開催については、「Sparkler」が社内で一番ノウハウがあると認知されるようになりたいです。

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若手の提案、主務とのバランスに配慮するヤフーカルチャー

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新卒1年目、2年目の社員が自分たちの関心を深め、同時に会社の将来を考えて立ち上げ、企画したコミュニティ作り。それが可能になった背景には、皆さんの熱意はもちろんですが、それをしっかり受け止めて支援する、ヤフーならではの社風もあるように思います。

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僕は勉強会文化がもともとある部署なので、コミュニティを作りたいと言ったら、上長はすぐ快諾してくれました。「コロナ禍でなければ、本来あるはずだった人と人のつながりを取り戻したいです」といった話も1on1でしましたね。その辺は僕も頑張りました(笑)。

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私の上長は、そもそもコミュニティ活動をしている人なので、むしろどんどんやってくださいと、後押しをしてくれました。

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私の部署はテクノロジーグループとはちょっと離れているので、業務にも関連する情報や知見があったら共有したいと説明したら、ぜひやってほしいと言われました(笑)。データコミュニティ作りは業務にも確実にプラスになりますし、私の目標として設定もしているので、業務時間内にある程度時間を割くのは構わないことになっています。

インタビュー中の風景

コミュニティ作りの活動が業務に活きたこと

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コミュニティ作りの活動が、業務に生かされていることはありますか。

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僕の主務はショッピング機能の開発ですが、今年度から兼務がつきました。これが可能になったのも、「Sparkler」活動のおかげだと思っています。将来的にはデータに関連した業務に携わりたいと上長や部長に相談していたところ、いまの兼務先に打診してもらえました。兼務先には、勉強会に登壇いただいた方や、「Sparkler」の活動から僕を評価してくれている方もいらっしゃいました。「Sparkler」では、その活動や勉強会の参加を通じて人脈形成やデータに関する発信ができることを、身を持って証明できたと思っています(笑)。

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Bonfireで「ジャーナリズムのデータ可視化」をテーマにしたこともあって、メディア統括本部内の編集者やアナリストたちの関心も高く、内容も評価してもらえました。ヤフーは多くのサービスを展開し、オフィスも全国にありますが、東京以外の地域のメンバーや、会ったことのない社内の人とのつながりも確実に増えましたね。話せる同期も増えて、仕事で困ったときにもいろいろ助けてもらっています。

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いろいろな人とコミュニケーションを取る機会が増えたので、オンラインとはいえ、初めての人とも臆せず会話できるようになったのが、個人的には大きい収穫です。もともと人見知りだったのですが、いまは少しだけ改善できた気がします(笑)。
データコミュニティ作りも一つのプロジェクト。そのリード役になったことで、マネジメントへの興味が湧いてきたことも、変化の一つですね。自分自身の今後のキャリアとしてもマネージャー職も選択肢の一つになってきました。

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僕もスケジュール管理や登壇者との連絡など、イベントをスムーズに進めるためのマネジメントスキルが身につきました。PDCAを回し、イベントの効果を測定する習慣などは、主務にも生かせていると思います。

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「Sparkler」の最終目標は、社内横断的にデータ関連のスキルアップを図ることと、自己研鑽の場の提供とカルチャー作り。その最終目標に向けてはまだ道半ばですし、まだ20%も実現できていないと考えています。こうしたコミュニティ活動の成果は一朝一夕には効果が現れないもの。それでも、継続することに意義があります。

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ヤフーの「データ文化」をさらに一段高みに引き上げてくれる若手エンジニアたちの活躍はとても貴重なものですね。これからも注目し、応援していきたいと思います。本日はありがとうございました!

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