「サイクル・ツーリズム」で宮城の観光振興を後押し

雄勝自慢のホタテを焼く地元の人たちの写真

雄勝自慢のホタテを焼く地元の人たち(撮影:Yahoo! JAPAN公式カメラ隊)

「雄勝の誇りを味わってほしい」

スタートから38km、雄勝エイドステーションに立ち寄ると、テントの下では大きな身を付けたホタテが豪快に炭火で焼かれていた。いい香りが会場を包む。

「このホタテは、雄勝の誇り。この味をライダーに楽しんでもらいたくて、朝3時に3000個のホタテを水揚げした。殻がついたまま食べる直前に炭火で焼く。これが雄勝の味。朝4時30分ぐらいから30人がかりで用意した。この味を一度味わったら、ほかのホタテは食えなくなる。さっきまで水のなかにいたホタテだからな。口に入れた瞬間に頭の中に太平洋が浮かぶんだよ」

石巻市役所雄勝総合支所地域振興課の及川豪さんは、ホタテを焼く手を休め、そう話してくれた。及川さんによれば、広い空き地に作られたエイドステーションがある場所は、かつて雄勝の中心地であり、何軒もの商店が軒を連ねていたという。だが、津波によって甚大な被害を受け、いまではほとんど人通りがない。

「人も建物も何もなくなってしまったこのまちで、どんな『恩返し』ができるのか。それがこの雄勝の誇り、ホタテだった。こうして毎年、ライダーの皆さんと触れ合い、話すことこそが、私たちにとっての復興なんだ」

雨のなかを走るライダーたちの写真

雨のなかを走るライダーたち(撮影:Yahoo! JAPAN公式カメラ隊)

いまも残る被災の跡を巡る

北上フォンド折り返し地点となる神割崎エイドステーションに到着するころには腹ペコ。ここでふるまわれた南三陸シーフードカレーの美味いこと。魚介の身がゴロゴロしている。最後の北上エイドステーションでは、最後のグルメ・十三浜茶碗蒸しをいただく。

ふと見ると、エイドステーションの横に石巻市復興まちづくり情報交流館北上館という真新しい資料館があった。中に入ってみると、そのエリアの震災前と復興後の写真が展示されていた。

中にいた職員の女性に聞くと、震災で部分的に流された新北上大橋が、つい先日、車道部分だけが先行して修復され、震災前のルートに戻されたという。たしかに、昨年、この橋の北側は、橋にはまっすぐ入れず、手前の仮設橋からぐるっと回って入ったことを思い出した。

ゆっくりかもしれない。しかし、着実に復興している。地元の方の力や再建にかける情熱に触れ、人のたくましさを知る。

そして、美しく舗装された真新しい路面を楽しみ、新北上大橋を渡ると、左手には震災の爪痕がそのまま残る大きな建物が見えた。そこは、大川小学校跡。多くの児童や職員が津波の犠牲になったその場所を見つめ、一礼してゴールに進んだ。石巻専修大学に仮設されたゴールラインでは、見知らぬたくさんの人が手を振り温かく迎えてくれた。

完走証を持ち、記念撮影するライダーの写真

完走証を持ち、記念撮影するライダー(撮影:Yahoo! JAPAN公式カメラ隊)

自転車イベントから「文化」へ

ツール・ド・東北は、サイクリングを楽しみながら、被災地の今を感じたり、風光明媚な景色のなかで地元の方と触れ合えるイベントだ。主催するヤフーと河北新報社はツール・ド・東北をきっかけにして、琵琶湖やしまなみ海道のように「サイクル・ツーリズム」で東北の交流人口を増やし、地域に貢献することを目指している。

ツール・ド・東北のコースは、心地よい走り応え、目に入る風景の美しさ、そして、美食まで、琵琶湖やしまなみに負けない魅力的なサイクリングエリアだ。女川・雄勝フォンドを出走した宮城県の村井嘉浩県知事も、宮城県としてサイクル・ツーリズムの振興にコミットしていく意向を表明している。

ヤフー株式会社ツール・ド・東北事務局の足達伊智郎事務局長は、「まずは10年続け、地元に引き継がれるようなイベントにしていきたい。官民連携しながら、ヤフーの『発信力』、ツール・ド・東北の『ブランド力』を生かして、自転車文化を根付かせたい」と展望を語った。

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