【アスリート社員として働く】車いすマラソン リオパラ五輪代表:洞ノ上浩太

【アスリート社員として働く】車いすマラソン リオパラ五輪代表:洞ノ上浩太

障がい者アスリートが現役期間中に競技活動と両立して業務経験を通じスキルを習得できる、「障がい者アスリート制度」を使ってヤフーで働くアスリート社員たち。

今回は、2016年リオパラリンピックの車いすマラソンで、日本最上位の7位に入賞した洞ノ上浩太に、ヤフーに入社したきっかけや仕事と選手生活を両立する上での工夫、4年後に向けての思いなどを聞きました。

-  現在の、選手生活と仕事の両立スタイルについて教えてください。

私は2015年の11月にヤフーに入社しました。現在は、基本的には毎日朝9時から13時まで勤務し、午後は練習の時間にあてています。
練習はだいたい、18時から19時くらいまでの間には終えるようにしています。それでは短いのでは、と感じる方もいるかもしれませんが、長時間練習することで疲れを溜めてしまうと、翌日のパフォーマンスが落ちてしまうんです。

昔は、長時間の練習をすればするほど効果が上がると思っていましたが、今は、走り込みをするのは長くても2時間くらいにとどめています。
いかに短い時間で集中して効率よく練習するかが課題なので、次の練習までに、しっかり休んで体を回復させることを大切にしています。

週末はレースに出ていることが多いため、レースにあわせてピークをもっていくよう練習を組み立てています。たとえば、ヨーロッパで開催される大きなレ ースに向けて、国内のレースに参加し調子を上げていったり、練習の成果を試したり。
レースやそれに向けた練習の予定、練習内容などはすべて自分で決めています。
毎日、その日の練習が終わった瞬間から、次の日の練習の準備をしている、という感じですね。

ただ、うまくいかなかったレース後などは、そこからすぐに練習を再開してしまうと、まだ(負けて)悔しい気持ちが強いので、練習内容を詰め込みすぎてしまったりするんです(^^
そんな時は、しばらく時間をおいて自分のことをちょっと客観的に見られるようになってから、練習の予定を立てるようにしています。


確実にやってくる引退の時。その後どのようにキャリアを積んでいけばいいのか不安だった

-  ヤフーで、アスリートと社会人との両立を選んだ理由を教えてください。

前に働いていた職場では、アスリートとして活動していました。もちろん、前職でも引退後のセカンドキャリアを考えていただいていたのですが、会社での業務を一切やっていない状態が3年以上続いていたため、キャリアへの不安がだんだん大きくなってきていました。
いつか、確実に競技を引退する時はやってくる、という思いもあり、これからどのようにキャリアを積んでいけばよいのだろう、と練習中でもふと考えてしまう時間が多くなっていました。

そんな時に、知人から「ヤフーはアスリート社員にも業務をしっかりやってもらうという考え方。セカンドキャリアとして、競技引退後はそのまま業務を続けてもらうことを理想としている」と紹介いただいたことが、入社のきっかけになりました。

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-  両立をする上で、時間の使い方で意識していることはありますか?

まだ業務の時間が少ないのですが、とにかく何事も、時間を決めて取り組むよう意識しています。
時間を効率的に使うため、練習の合間などに、会社から貸与されているスマホで業務のメールの確認をしたり、返信をしたりもしています。

競技と両立するという業務スタイルをみなさんが理解してくださっているとはいえ、業務上のやりとりはできるだけ反応を速くした方が良いと思っているので、できる範囲でではありますが、隙間時間をうまく使うことを意識しています。
自分のブログやInstagramなど、ソーシャルでの情報発信もアスリートとして活動し応援していただくためにやらなくてはいけないことだと思っているので、それらも含めてバランスよくやっていきたいですね。

同僚のみなさんは「練習に行ってください!」と笑顔で送り出してくださるので、その分、「気を抜かずに練習しよう!」とより思いますし、練習がハードな時も、みんなの顔が浮かんでくると頑張れるんです。
そして、会社に自分のデスクがある、自分の場所があるということはとても幸せだなと感じています。

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「競技で結果を出すだけではない」役割もヤフーで果たしていきたい

-  限られた時間の中での同僚とのコミュニケーションの工夫はありますか?

時間のあるときは13時に勤務を終え、みんなとお昼を一緒に食べてから練習に行くようにしたり、あえて社内のフリースペースでパンを食べたりして、できるだけ同僚のみなさんとの接点を増やすことを意識しています。

また、社内に応援してくださる方たちがいて、レースの応援やイベントなどに参加してくださったりすることもうれしいです。アスリート活動を通じてヤフーの社員同士の交流や横のつながりが生まれるきっかけになれたら、とも思っています。
「競技に取り組み、結果を出す」アスリートだけではない役割を果たすことができたらうれしいですね。

-  車いすマラソンの魅力はどこですか?

スピード感、迫力、駆け引き、この3つだと私は思っています。
車いすマラソンでは、時速30キロくらいスピードが出るので、速度が出れば出るほど、先頭の選手は風の抵抗を受け疲労しますが、その後ろにいる選手は70%の力でいけたりするんです。

リオパラリンピックのレースでも、かなり駆け引きがありました。ラスト4キロくらいから、一気にみんなのペースが落ちたんです。ラストスパートに備え、力を温存しながらけん制しあっている状況でした。
たとえば上り坂が得意、など、各選手に得意とするポイントがあるので、それをどこで発揮するか、お互いにタイミングをはかっていましたね。

誰かがしかけて、それに他の選手が付いていく。集団から誰が出るかわからないという状態の中で走るので、それこそもう一度同じレースをしたら今度は誰がメダルを獲得するかわからないというくらい、ポジションやスパートするタイミングによって結果も全然変わってしまうんです。

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- 車いすマラソンで使用しているグローブについて、みなさん工夫しているそうですね。

はい、みんな自分のスタイルにあわせて工夫していて、たとえば、蹴り出しに使う人差し指と中指部分を硬めにするなど、自分の手にしっくりくるよう調整を重ねているので、一人として同じグローブの人はいないんですよ。

私にとっても、自分に合ったグローブをつくることが課題でした。
グローブは実は手作りで、プラスチックの粒を熱湯などで溶かしたものを自分の手の形や動きに合わせてまず型を取り、その上にクッションやゴムなどを貼って作っていきます。
右手のグローブはしっくりきたので3年使っていたのですが、左手用のグローブはいつもしっくりこず、毎年作りかえていました。でも、今は3Dプリンタを使って右手用のグローブのデータを反転させれば、左手用も右手とまったく同じものが作れるようになりました。ここまでくるのに10年くらいかかっています(^^

車いすマラソンにおいて、グローブは腕の力を直接車輪に伝える道具なので、足で走る人にとってのシューズにあたるもの。とても大切です。
練習の時に、走ってからその場ですぐにグローブの形を調整した時もありました。練習後、家に帰ってから調整するのと、外ではめて走ってからすぐに調整するのとでは全然違うんです。

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(車いすマラソン用のグローブ)

- 仕事で目標にしていることを教えてください!

引退後はもちろん、業務を頑張っていきますが、これまでの競技生活のなかで経験してきたことをまったくゼロにするのはもったいないとも思っています。
もし許されるのであれば、イベントでの講演や若手の育成に関わっていけたらうれしいですね。

また、できるだけオンとオフをしっかり切り分けることをいつも意識しています。
オフの時は全力で休みますし、オンの時は、たとえば1日のなかでもピークを1回だけもっていくなど、細分化していくことが私にとっての効率がよい動き方だと感じています。


2020年、東京パラリンピックに向けて


-  選手としては、4年後に向けてはどのように考えていますか?

もちろん、東京パラリンピックに向けて頑張りたいですね。
ただ、年齢も年齢なので、4年後に向けてピークをもっていく回数を年間で少なくしていこうと思っています。1年のうちに何回もピークをもっていくときついので、大きく2回くらいにしていこうと。

実は、年齢を重ねても、パフォーマンスはあまり落ちないですし、むしろスプリント力や筋力は上がっています。ただ……回復力が落ちているので、前日の練習の疲れがとれないまま練習していると感じる時もあります。

そして、これまでは自分の考えでやってきたのですが、そろそろそのやり方は限界かなと。
これまでの試合データをもとにしたり、グローブやポジション争いの戦略についてなど、みなさんから意見をもらいながら、さらに上のステップに行きたいと思っています。4年後は、リオとは全然違う戦い方ができると思っているので、楽しみです。
まだまだ成長できるのではないかと思っています。

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-  リオパラリンピックが終わったばかりですが、もう4年後に向けて動き出している感じですね

はい、この競技は練習で試してみたことの結果が出るまでに時間がかかるんです。結果がわかってから、そのまま続けるのか、練習方法を変えるのかを決めますし、世界は物凄いスピードで進化していますので、私もそれ以上に成長していく必要があります。

たとえば、9月にパラリンピックが開催されるとしたら、9月に向けてピークをもっていくトレーニングは、本番までにはあと3回しかできないんですよね。
そして、大会の1年半前から選考期間になるので、そう考えると、あと2年半しかないんです。

もちろん、東京パラリンピックにはヤフーの障がい者アスリート4人で出場したいです!

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(写真撮影:今野 大介、大谷 夏子、ほか) 

【関連リンク】
洞ノ上浩太公式ブログ
洞ノ上浩太Instagram
「インターネットの会社だからできる両立を目指して」アスリート社員として働く(車いすフェンシング:加納慎太郎)
「アスリートとしての夢もヤフーでかなえたい」 アスリート社員として働く(パラバドミントン:杉野明子)
「競技活動と業務経験の両立を支援する」 ヤフーの障がい者アスリート制度