Yahoo! JAPANの「先端技術」とは?

Yahoo! JAPANの「先端技術」とは?

今回は「先端技術応用室」のエンジニアのみなさんに、一枚の画像だけだと表現しきれなかったモノの立体感やボリューム感をわかりやすく伝えるための「擬似3D画像」技術について聞きました。
「擬似3D画像」は、中学校の「デジタル教科書」としても使われているそうです。一体どんな技術なのでしょうか?

(写真左から先端技術応用室の東野、鈴木)


- まず、「先端技術応用室」について教えてください。

鈴木:
ヤフーはこれまで、検索やマルチビッグデータ処理をはじめとした、データ処理の分野では技術的な強みを発揮してきました。しかし一方で、膨大なユーザとサービスとの界面であるユーザインタフェースや新しい表現方法については、残念ながら目立った技術的取り組みができていないのが実情です。

「先端技術応用室」はこの弱点を補うため、データだけではなくユーザインタフェースでも世界を驚かせる技術の研究開発を担っていく部署として、去年新設されました。

東野:
部署の名前に「応用」とついていますが、われわれは基礎研究ではなく近い将来にサービスで使われることを前提とした研究開発に力を入れています。

とはいえ、今すぐ使える技術では世界の競合相手と差別化することはできないため、学会でも通用する最先端の研究と応用のバランスをとりながら、実用化を目指して開発しています。それがたまたま世界最先端で、かつ、国際会議でも発表できるような技術になるというのが理想です。

西:
いま具体的に応用が進んでいる先端技術としては「擬似3D画像」があります。
これは特別なスタジオや器材ではなく、普通のデジカメやスマホで撮影するだけで、被写体を立体的に見せることができる次世代のインタフェースです。ヤフーのサービスだけではなく、社外のパートナー様にも積極的に導入をご検討いただいています。

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(先端技術応用室の西)

- 「擬似3D画像」について、もう少し詳しく教えてください。

鈴木:
デジカメで撮影した画像は、一枚の平面に写されたものなのであまり立体感がありません。
たとえば、一枚の画像だけだと表現しきれなかった車の立体感やボリューム感をユーザーにわかりやすく伝えるために、擬似3D画像を利用しました。グループ会社のCarview! では、オートサロンという車の展示会に出展された車を擬似3D画像で表示するサービスを公開しています。
まるで発表会の現場に行って実際に車を見まわしているような感覚を提供することが理想です。

「デジタル教科書」として中学校にも導入 


- 擬似3D画像は、デジタル教科書(※)にも使われたそうですね。

西:
はい、業界最大手である東京書籍様の2016年度中学校技術と理科のデジタル教科書の一部に、擬似3D画像を導入していただきました。
デジタル教科書には、紙面の内容に加え、録画映像などが多数収録されています。動的なコンテンツを加えることで、紙の書籍では限界があった表現力を劇的に向上させ、生徒の理解を促進させる効果が期待されています。

※デジタル教科書
全国の学校で使用されている検定教科書の紙面をデジタル化した提示用教材。一般的に指導者用デジタル教科書と呼ばれる。学校専売商品。

たとえばカブトムシの動画を見せるのと、実際に手に取っていろいろな角度から見てもらうのでは、伝わる存在感や情報量が圧倒的に違いますし、子どもたちにも興味をもってもらいやすいと思います。
生徒一人一人にカブトムシを用意するのは大変ですが、擬似3D画像でカブトムシを撮影しておけば、手に取って見るのに近い体験ができ、高い学習効果が期待できるのではないかと考えています。

鈴木:
写真1枚だと見える範囲は限られますが、いろいろな角度から立体的に観察すると、よりわかりやすくなるということが、採用された大きな理由だと思います。  
たとえば、この写真は中学校の技術の授業で使う、ノコギリで木を切る様子を紹介したものです。写真をグルグル回して、いろいろな角度から良い姿勢と悪い姿勢を見比べることのできる資料として使われました。

(実際に中学校で使用されているデジタル教科書)

- この擬似3D画像は、どのようにして作っているのですか?

鈴木:
擬似3D画像を作成するためには、いろいろな方向から撮った写真が必要です。たとえば先ほどお話したオートサロン擬似3D画像は、色々な角度から2~30枚くらい撮影しています。でも、特別な撮り方があるわけではなく、撮りたいものの周りを歩きながらデジカメでパシャパシャ撮るだけです!

このようにして撮影された写真をそのまま使うだけではガタガタして見えるので、これをなめらかに調整してウェブページで回してみられるようにしたものが擬似3D画像となります。撮影してから擬似3D画像としてサービスに提供できるまでにかかる時間は最短で約5分です。撮影の手軽さと、提供までのスピードが大きな武器だと思います。

オートサロン特集では、会場で70セットほど撮影し、そのままその場で擬似3D画像変換して、その日のうちに公開までしていただけました。

東野:
撮影の方法がわかれば、普通の人でも簡単に擬似3D画像を生成できるのも、この技術の優れた点だと思います。

擬似3D画像は、他にどのような応用が考えられますか?

東野:
たとえば、美容院でいろいろな髪形の写真を複数の角度から見て、参考にできたらいいなと思います。横から見るとこういう風になる、などがわかるといいなと。

西:
ショッピングサイトやネットオークションの商品画像など、ありとあらゆる画像が3Dになっていけばいいと思っています。
普段みなさんが買い物をする時は、商品を手に取りいろいろな角度から見て検討すると思うのですが、それと同じことがインターネット上の買い物でもできるようになれば、より適切な選択ができるようになる可能性姓が高まります。そのことで、返品されたり捨てられたりする物が減るというサイクルを作れたらと思っています。

鈴木:
スポーツをしているときの姿勢を擬似3D画像にして、ネットでいろいろな角度からいいフォームを見ることができるようになったらいいなと思います。

- 擬似3D画像など、この分野のおもしろさ、やりがいを教えてください。

西:
他人が作った技術ではなく、そして自分たちでも見たことがない技術を産み出すことができることが面白いですね。

東野:
特許をはじめとする知財を生み出せるというところにやりがいを感じます。
応用を前提としてはいますが、やはり基礎的な研究から積み上げていくため、特許も適用範囲の広いものになると思っています。

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世界中すべての画像を擬似3D画像に


- 最後に、みなさんがこれから取り組んでいきたいことを教えてください!

東野:
擬似3D画像を動画にも対応させて、今後は、2020年に向けてスポーツの分野でもぜひこの技術を使って盛り上げていきたいですね。
私はスマートウオッチでもフリック入力ができるユーザインタフェースを開発しましたが、このような新しいインタフェースの提案も部門のミッションであるため、これからも継続して研究開発していこうと思っています。

西:
擬似3D画像はまだ十分に普及していないので、どんなサービスでも簡単に導入できるようもっと完成度をあげていきたいです。
最終的な目標は、世の中のすべての画像を擬似3D画像にすることなので、それに向けて一歩一歩がんばります!
先端技術の研究開発は、すぐには利益が出るものではありませんが、将来を見据えて投資してもらっていると思っているので、期待に応えていきたいです!