【3.11から5年 〈4〉】「過去を検証し、未来の災害に備える」ビッグデータで防災する

【3.11から5年 〈4〉】「過去を検証し、未来の災害に備える」ビッグデータで防災する

日本最大級のポータルサイトYahoo! JAPANでは、検索ワードをはじめ、あらゆる匿名化されたビッグデータを蓄積しています。
3月10日、Yahoo! JAPANの東日本大震災復興支援特集「震災から5年、いま応援できること。」の一環で、そのビッグデータを防災に役立てる試みの企画「ビッグデータで知る防災」を公開しました。
企画を担当したメディアカンパニー技術戦略部の池宮と、マーケティング&コミュニケーション本部クリエイティブ推進部の堀口に、企画の意図や制作の裏側について聞きました。
(左から、本企画ディレクション担当の堀口、データ分析担当の池宮)

東日本大震災から5年、未来につなげる「防災」を

- 特集企画「ビッグデータで知る防災」の内容について教えてください。

池宮:
今回の企画は「過去のビッグデータを未来の防災につなげる」をコンセプトに、まず実際に発生した災害のときにインターネット上で検索されたキーワードを時系列で振り返り、そこから具体的に未来の防災に役立つ情報を提案する、という2部構成でお届けしています。

堀口:
「災害時に検索されたもの」とは、イコール「災害時に必要とされたもの」ということです。当時検索されたものを知っておくことで、未来の災害への備えにつながるのではないか、というのがこの企画の狙いです。

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(「ビッグデータで知る防災」のパソコン版サイト)

- 地震、豪雨、大雪についてそれぞれ実際にあった災害が例として紹介されていますが、それらを選んだ背景は?

池宮:
今回、具体的な例として、地震は「東日本大震災」、豪雨は「平成27年9月関東・東北豪雨」、大雪は今年1月の「九州地方 大雪被害」の3つの災害を振り返っています。
データを参照し、昨今の自然災害の中から、災害規模や社会的影響度の比較的大きかったものを取り上げました。

堀口:
東日本大震災の場合、原発問題などもあり、今後の災害の備えの例としては規模が大きすぎる地震でしたが、東日本大震災の復興支援特集でやる意義があるのではと思い、採用しました。
また、豪雨や大雪は、私たちも数年に一度は被害にあう身近な災害です。「備え」という意識づけにおいてより具体的にイメージしやすいという理由から、同じく取り上げました。

「起こりうる問題は過去のデータが教えてくれる」

- そもそも今回の企画をやることになったきっかけは何だったのでしょうか?

池宮:
日ごろYahoo!検索の膨大なログデータに接している立場として「起こりうる問題は過去のデータが教えてくれる」と実感しており、そのデータを今後の災害の備えに活用できないか、と考えていました。
そう考えるようになったきっかけは、2014年2月に関東地方をおそった大雪被害でした。「エアコンの室外機が止まった」「雪かきの雪をどこに捨てればよいのか?」など、大雪に慣れていない地域ならではのトラブル、悩みがたくさんログデータで残ったんです。このデータは有効活用できるのではないか、と。

また、個人的に阪神大震災を経験したというものあり、東日本大震災から5年という節目の今年、「あのときこうだった」という何度もおこなってきた振り返りの手法ではない、未来にちゃんとつながるような防災を発信したいと思っていました。

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(データ分析を担当、メディアカンパニー技術戦略部の池宮)

堀口:
私は例年、Yahoo! JAPANで東日本大震災の復興支援特集を担当してきたのですが、震災から5年たち、ただ単に当時の状況を振り返るというアプローチに疑問を感じ始めていました。もちろん、同じアプローチで防災を訴え続ける大切さも重々承知しているつもりですが、もっと今の時代に合った新しい防災のやり方があるのではないか、と。
そんなときに、ちょうど池宮さんから、過去の検索データを未来の防災へとつなげる企画の相談を受けました。数々のデータを蓄積しているYahoo! JAPANだからこそ可能なコンテンツだと思いましたし、このアプローチなら「防災」自体をアップデートできるのではないか、ぜひ一緒にやりましょう、となりました。

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(企画ディレクションを担当、マーケティング&コミュニケーション本部クリエイティブ推進部の堀口)

災害時、「その日」「その場所」で必要とされた情報から学ぶ

- パソコン版のサイトでは、災害時に検索されたワードが、日本地図上のそれぞれの場所に、時系列でどんどん表れては消えていきます。これは、実際にその日にその場所で検索されたワード、ということでしょうか?

池宮:
はい、そうです。今回、時系列で地域別に検索ワードを表示することをとても重視しました。なぜなら、災害時には、日や場所によって、検索されるワードも顕著に変わってくるからです。
たとえば、東日本大震災の場合、震災の中心地だった東北地方では、最初に「水」など自分の命を守るための情報、しばらくしたら「ガソリン」「入浴」など生活に関する情報、そしてようやく周囲の状況を確認する「安否情報」が検索されました。しかし、震災の中心から離れた関東地方では「安否情報」はわりと真っ先に検索されたワードでした。
被災地とそれ以外の地方では検索ワード、すなわち、必要とされた情報が違った。そういう気づきを伝えたくて、時系列、かつ地域別の表示にこだわりました。

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(CASE1「東日本大震災」のパソコン版のページ。時系列で、地域別に検索されたワードを表示)

堀口:
検索ワードも、なるべく当時の記憶を薄れさせないような形で、池宮さんに実際のログデータに近いものをピックアップしてもらいました。
また、要所要所で、なぜこのワードがこのタイミングで検索されたかの検証や、そこからの気づきや発見もテキストで一緒に解説しています。

池宮:
時系列で検索ワードを追うことで、“追体験”という形で当時の災害を振り返ることができます。
災害時にはまず初めに何が必要で、次に何が必要で……といった防災対策の優先付けにおいても有効な内容になっているのではないかと思います。

堀口:
そのときに調べられた情報をなぞって避難訓練をする、という感覚ですよね。 

- 検索データから浮かび上がった防災対策には、たとえばどんなものがありましたか? 

池宮:
東日本大震災の場合、震災が起こってから、それぞれの地域の「役所」の検索が異常なレベルで増えました。役所のサイトがまず第一に調べられた、ということは、おそらく、被災したときに必要な給水情報や避難情報などの生活情報がどこから発信されるのかをみなさんちゃんと知らなかった、ということではないかと。しかし、役所のサイトでそれらの生活情報がすべてカバーできているとは限らないケースもあります。
災害が起こってから慌てて調べるのではなく、たとえば停電情報は電力会社のサイトにあるとか、給水情報は自治体から発信されることなどを事前に把握しておくことで、今後の災害の備えにつながるのではないでしょうか。

堀口:
また、これだけ災害のときに必要な情報が検索されている、ということは、検索するデバイス自体も相当重要だといえますよね。そして、そのデバイスに電源が入っていなかったら必要な情報も探せません……。今の時代においては、モバイルバッテリーを備えておくことも防災の重要な第一歩かもしれない、とあらためて思いましたね。

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(検索データから、今後の防災対策を提案する「データから学ぶ防災アクション」のページ)

- 最後に、この企画を通じて感じたことがあれば教えてください。

池宮:
災害時に検索している、ということは、その情報が災害時に手元にない、ということです。ただ、防災という観点からすると、災害が起こってから調べるのでは遅い。起こる前に把握しておかないといけません。
今後は、災害時にこういう需要がある、ということを、災害が起こりそうなときに先回りしてユーザーに知らせるサービスなどに役立てていければと思います。

堀口:
みなさん子どものころから、基本的な防災の内容についてはずっと聞いてきたと思います。もちろんその内容も役に立つものだとは思いますが、今回、ビッグデータを活用することで、よりリアルで身近な防災対策を提案できたのではないかと思っています。3.11から5年のこの節目に、この企画が未来の災害に備えるためのきっかけになってもらえれば幸いです。

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