【3.11から5年 〈2〉】 石巻の社員に聞く被災地の「いま」と「これから」

【3.11から5年 〈2〉】 石巻の社員に聞く被災地の「いま」と「これから」

ヤフーでは、2012年7月から宮城県石巻市に東北支社(石巻復興ベース)復興支援室を開設。現在、3名の社員が現地に住み復興支援活動を行っています。
石巻市在住4年目の長谷川さん、3年目の鈴木さん、1年目の松本さんが、現地に住み見えてきた石巻のいま、そして今後の復興支援のあり方について話し合いました。

松本さん(写真左):新しいプロジェクトの立ち上げを企画中。2015年11月から石巻在住 /長谷川さん(写真中央):復興デパートメントやフィッシャーマンジャパンを担当。2012年7月から石巻在住 /鈴木さん(写真右):ツール・ド・東北や民泊を担当。2013年4月から石巻在住 

復興支援室から見た宮城県・石巻

松本:
昨年の11月末に石巻に引っ越して来ましたが、自分が生活している範囲では、ここが被災地だとあらためて感じることは滅多にありません。仮設住宅も中心から離れた高台にありますし。もっと深く入りこむと違うのかもしれませんが。

長谷川:
4年前に引っ越してきた時は、がれきが処理場にいっぱいつんであったし、震災の爪痕が町のいたるところにありました。石巻復興ベース(以下、復興ベース)の目の前の家も被災した跡が残っていました。いまは風景としては、がれきも片付いていてきれいになっていますね。

鈴木:
自分が来た3年前もがれきはまだありましたが、いまはインフラなど目に見えるところは変わってきていますよね

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(2015年8月に石巻市内で開催された「川開き祭り」の様子)

長谷川:
ただ見た目だけではわからない根深い問題は残っていて、家族を亡くした方や、表にはあまり現れてきていないけれど、子どもの不登校や家庭内暴力の問題なども増えてきているという話を地元の方から聞きます。

鈴木:
話としてはよく聞きますが、自分たちは仮設住宅を毎日訪ねたり、そういった方たちのケアをしているわけではないので、地元にいてもきちんと見えていない部分だと思います。

長谷川:
自分たちが仮設住宅の方のケアをするというのは効率的に違うだろうし、ヤフーの人間としてはやっていない。けれどここに住んでいることで、そういったことをやっている団体も含め、地元の人からいろいろな情報が集まってくる。ほかにも工事費が上がって、工場の建築に当初の1.5倍かかってしまった話など、個人個人いろいろな事情があって、問題はどんどん多様化していると感じます。

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(2016年3月、日和山から見た石巻市内)

若手プレーヤーが少ない。現地で感じた課題

長谷川:
地方全体の課題だと思うのですが、コーディネーターといわれるような人が足りない。いいアイディアがあってもそれを形にする人が足りていない。震災直後は、みんなでなんとかやっていましたが、どんどん日常に戻ってきていて、家族や通常の業務が大事になってほかのことができなくなっていると感じています。

鈴木:
自分もそう感じます。思いを伝えたり理想を語ったりする人はいるけど、それを実現させる人が足りていない。特に若手の人。うまくやっている活動は、外から移住して来た人などで、もともとコーディネーター的なスキルを持っている人たちが多いと思います。

松本:
若手が少ないのは、東京と比べてですが、求人広告を見ても大学を出た人がやりたいと思う仕事が少ないからなんだと思います。プレーヤーになりうる若い人が活躍する場所が少ないのかなと。
ただ復興ベースには、「地域活性化」という文脈で地元に貢献したい高校生や大学生がたくさん来てくれます。彼らと一緒に、若い人が活躍できる場所やビジネスをつくりたいと思っています。 

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復興支援室の役割


鈴木:
東京にいる時のほうが、「復興」という言葉を聞きますよね。こちらにいると復興ではなく「地方活性化」という文脈で会話することが多い。

松本:
確かに。こちらに来てから「復興」という言葉はほとんど聞いていないですね。

長谷川:
仮設住宅に住んでいる方、身内や友人を亡くして心に深い傷を負っている方、復興しているかどうかは人それぞれの気持ちや状況によって違うと思いますし、終わりがあるものだとも思いません。
ですが、自分のまわりの地元メンバーからは復興という言葉を聞かない。むしろ今度は恩返ししたいという気持ちがあるともいいます。なので個人的には復興支援室という名前もそろそろ見直す時期に来ていると思っています。

鈴木:
もちろんまだまだ支援が必要な方がいらっしゃるのは事実ですが、自分たちが取り組める範囲では、一方的な「支援」ではなく対等な関係で一緒に「ビジネス」をつくるフェーズに来ているのだと思います。個人的にも、地方にお金が回る仕組みをつくりたいと思って復興支援室に来ました。ヤフーとしてもビジネスとして地方にお金がまわる仕組みをつくって、どんどん地域をよくしていることを愚直にやるしかないと思っています。

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(石巻復興ベースの外観)

「ヤフーらしくない」と言われるけれど……

長谷川:
もともと石巻に支社を作らせてもらったのは、現地じゃないとわからないことがたくさんあると思ったから。それから当時は緊急事態で、リモートで東京から指示しても現地のニーズと向き合えない。復興を自分の目で見ながら、その人にあった活動をやるには現地に行ったほうがいいと判断したんです 。
ですが実際現地に来て、ヤフーとして何をするのがベストか? は常に悩んでいます。ヤフー的なプロジェクトでドンズバ(ぴったり)なものがなかなか見つからないからです。

鈴木:
復興支援室ができて4年目に入りますが、ヤフー的なスケールモデルやシステム化されたものがまだつくれていない。ただそこを最初から狙って考えるとどん詰まりしてしまう……。

長谷川:
スケールして大きくなるものが簡単に見つかるようであれば東京で誰かがやっているはず。東京側でできないことをやるのが自分たちの役割とも思っていて。「ヤフーらしくない」と社内でもよく言われますが……。本当は「ヤフーらしくない」は褒め言葉だ、といえる室にしたいです。

が、ジレンマはもちろんあります。フィッシャーマンジャパンや復興デパートメント、東北ものづくりライブラリーなど、さまざまなプロジェクトを立ち上げていますが、まだまだ胸を張って実績と言えるものがない。それも、会社の名前と個人の名前がセットで成立するような実績や評価をださなくてはいけないと思っています。鈴木さんが中心となって実現させた民泊も、ヤフーの鈴木さんだったからできたと言われるようにしたいですよね。

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(民泊視察の様子)

鈴木:
民泊もやっとスタートラインに立てただけで、これがあったから10年後よかったね、となるまでの影響力はありません。ヤフーの誰々さんが入ったからこうなったんだよね、と言われるようにさらに発展させていきたいと思っています。

松本:
ヤフーとして、復興ベースの有効活用も考えています。これまではほそぼそと場所貸しやコーワーキングスペースとして開放していましたが、いまは実験的にインターン採用を行ったり積極的に視察なども受け入れています。

長谷川:
正直、これまで復興ベースを「場」としてうまく使えていませんでした。松本さんが来てくれたことですし、せっかくヤフーがやるのであれば、情報発信のスキルを磨いたり、クリエイティブなことができる場所にして、若手の育成やイノベーションにつながる場所にしていこうと話しています。 

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地元視点で考える課題解決の方法

鈴木:
来てすぐのときは「いつ帰るの?」といったことをよく地元の方に言われていましたが、ツール・ド・東北など目に見える取り組みができた今ではなくなりました。
また現地にいると、地元の方が話を聞いてくれる態度が全然違います。ツール・ド・東北も、単発のイベントだったら協力しないけど、10年やるというなら協力する、という方がほとんどでした。地域をよりよくしていくために、やり続けることの大切さを日々感じています。

松本:
若手がいないという課題を解決するには、東京にいった若者がこの地域に来たら楽しいと思えることや若者が戻ってきたくなる仕組みを作ることが必要なんだと思います。

長谷川:
人材を定着させる取り組みとして、フィッシャーマンジャパンで漁師の求人サイトを作っています。いま必要なのは、コミュニティの受け皿力。どういう人材が欲しくて、その人が仮にきてくれたどうやって定着・定住してもらうのか? を考えながら求人活動を行っています。
まず受け皿としてのコミュニティをなんとかしないと、スケールを大きくしていくプロジェクトや横展開していけるような事例はできないと思うんです。

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鈴木:
ヤフーにも多様な人材がいますよね。転職してくる人が多く、ツール・ド・東北では、前職イベンターをやっていた社員に出会いました。それに地域活性化に興味がある人もとても多いと感じます。そういったさまざまなヤフーの人材がもっと地方に来てくれるようになればいいなと思っています。そのために自分たちももっと頑張らなければですが。

松本:
自分は石巻支社に来て働き方が変わりました。人の出入りが多く出会いが多いです。また暮らしはじめたことで、地域の隠れたすごい人にも出会うことができました。

長谷川:
もしかしてそれは桃浦地区の甲谷区長? 

松本:
はい。87歳にして「10年先のことを考えなければいけない」「廃校を俺が買うから、地域のコミ二ティにしよう」といえる人に初めて出会いました(笑)

長谷川:
地方にくれば、もっと社員も面白くなるだろうし、地方の人も面白くなるはずです。ヤフーのミッションは「課題解決エンジン」、自分たちは課題を見つけたら、ウェブだけにとらわれず、あの手この手でその課題の解決に挑戦し続ける拠点でありたいと思っています。

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