小国士朗さんに聞く「新しい価値の生み出し方」

ヤフーは年に1回、人事・執行役員・従業員有志が連携して、社内のダイバーシティ推進を目的とした啓発イベント「ダイバーシティウィーク」を開催しています。
今年度は「WhY!Diversity?」をテーマに、なぜヤフーがダイバーシティに取り組むのかを社外有識者の講演やワークショップ、役員メッセージなどを通して社員が考えるきっかけとなりました。

基調講演では、認知症の方がホールスタッフを務めるレストラン「注文をまちがえる料理店」を発案した元NHK番組ディレクター小国(おぐに)士朗さんをお招きして、新しい価値の生み出し方や発想の原点についてうかがいました。

ハンバーグがギョーザになって出てきたことが発想の原点

「注文をまちがえる料理店」は、認知症の状態にある方がホールスタッフを務め、注文をとってサーブするという、期間限定のレストランです。たとえば、ハンバーグを注文してもその通りに届くかわからないのですが、「その間違いを受け入れて楽しんでしまおう」、という取り組みで、「間違えちゃったけど、まあ、いいか」がコンセプトになっています。

この発想が生まれたきっかけは、「認知症になっても最期まで自分らしく生きることをサポートする介護」をモットーにしたグループホームを取材したことです。そこでは入居者が料理、掃除、洗濯、買い物などの自分でやれることはやっていました。とはいえ、認知症のため少しずつ困ることが出てくるので、それを福祉の専門職の方が支えている、という環境でした。

ある日、おじいさん、おばあさんのつくる料理をホームで食べたときに、今日のメニューはハンバーグだと聞いていたのに、出てきたのはギョーザだったんです。でも、認知症の方はそのギョーザをおいしそうに食べているし、福祉の方も普通に食事をサポートしていました。ハンバーグのはずだったのにギョーザが出てきたことに違和感があったのは私しかいなかったんです。

そのときに気づいたのは、「間違いをその場にいる人たちが受け入れてしまえば間違いではなくなるんだ」ということ。そう思ったことが、発想の大きな原点になりました。
間違いを「ダメだよ」「こうするんだよ」と言うことは簡単ですが、間違いを受け入れてしまえばそれがゼロになります。「ハンバーグでもギョーザでも、おいしければどちらでもいい、まあいいか」とみんながおいしそうに食べている様子がとてもすてきだと思いました。
ですが、この光景は私がグループホームに取材に行ったから見られたもので、日常生活のなかではなかなか見ることができません。それなら、同じ場所を街のなかにつくったらいいのではないかと思ったんです。こんなにすてきな光景を形にしないのはもったいないと思いました。

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レストランの様子

「注文をまちがえる料理店」で認知症の人との新しい出会い方を実現

「注文をまちがえる料理店」を街につくるうえで意識したのは、とにかく「おしゃれでおいしい」ということ、そして、福祉のプロジェクトだと言わないこと。それこそ、デートで来られる場所にしたいと話していて、おしゃれなレストランがあって来店してみたら、たまたま働いている人が認知症だった、という出会いにしたかったんです。

ある日、20代のご夫婦が来店してくださったのですが、食べ終わってから感想を聞いてみたら「オムライスを頼んだら(ちゃんと)オムライスが出てきました」「認知症の方って普通なんですね」と言って帰っていかれました。もちろんこれは認知症のある一側面しか語っていないわけですけど、こんな形で認知症と出会える経験のデザインは、これまであまりなかったような気がします。

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レストランの様子

新しい価値を生み出すには「NO」と言われるくらいのものを世の中に投げかける

私は、企画力と企画を実現する力(私はそれを「着地力」と呼んでいます)、圧倒的に着地力が大事だと思っています。企画しても着地しないものはないのと同じで、何のバリューも出していないと思っています。
やりたいと思っても、社内で提案が通りにくい、お金がない、反対されるなど、思うように進まないことも多いですし、「注文をまちがえる料理店」についても「認知症の方を見世物にするのか」とか「不謹慎だ」などという意見もありました。
「良い」「悪い」の境界線はギリギリだと思っていますし、とても難しい判断になることもありますが、「NO」と言われるくらいのものをつくったほうが、世の中に投げかける意味があると思っています。

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小国士朗さん

「注文をまちがえる料理店」のコンセプトがを「間違えちゃったけど、まあ、いいか」としたのはとても大切なことだったと思います。
それはなぜかというと、認知症であってもなくても、誰にだって間違えてしまうことはありますよね。そういうときに「まあいいか」と言ってもらえたら、ほっとする、というコンセプトの方が、より多くの人に共感してもらえるのではないかと思うからです。

「シェアイシュー」という言い方を私はよくしますが、たとえばカーシェアリングやシェアハウスのように、イシュー(課題)をみんなでどれだけシェアして考えられるか、シェアしやすいメッセージがあるかということを、強く意識して届けています。

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左から小国士朗さん、ヤフーブランドマネジメント室長の内田伸哉

小国さんの対談相手として登壇した内田は、ヤフーの3.11防災広告「ちょうどこの高さ」について「あの高さの津波を銀座にもってきて表現するのは不謹慎だととらえられる可能性もありました。でも、YESかNOか議論が起こるくらいのことをやらないと意味がないと、私も思っています」と語っていました。

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ヤフーの3.11防災広告「ちょうどこの高さ」 2018年は東京・銀座に、2019年は東京・渋谷(写真)に掲示

【小国士朗さんプロフィール】

株式会社小国士朗事務所 代表取締役/プロデューサー。
2003年、NHKに入局。ドキュメンタリー番組を制作するかたわら、200万ダウンロードを記録したスマホアプリ「プロフェッショナル 私の流儀」の企画立案や世界1億再生を突破した動画を含む、SNS向けの動画配信サービス「NHK1.5チャンネル」の編集長の他、個人的プロジェクトとして、世界150カ国に配信された、認知症の人がホールスタッフを務める「注文をまちがえる料理店」などをてがける。
2018年6月にNHKを退局、フリーランスのプロデューサーとして活動。

【ヤフーのダイバーシティの基本方針】

多様な人財が最大限の能力を発揮し、組織力を最大化することで、私たちの企業ミッションである「情報技術で人々や社会の課題を解決すること」を目指します。ミッションおよび経営戦略の実現のため、人事のコアコンセプトを「才能と情熱を解き放つ」として推進しています。
実現に向けて、経験・価値観・ライフステージ・属性の違いにかかわらず、社員ひとりひとりを尊重し、活躍できる土台をつくり、多様なサービスや事業のイノベーション創出に生かしていきます。
そのための取り組みとして、ヤフーでは女性・育児・LGBT・障がい者・グローバルなどをテーマとして、社員で構成されるプロジェクトによる課題解決を中心に取り組んでいます。また、プロジェクトごとに執行役員によるスポンサーシップ体制を構築し、経営コミットメントのもと、ダイバーシティの施策を行っています。

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