ブランディングのプロが教える、もらってうれしいノベルティの作り方

ブランディングのプロが教える、もらってうれしいノベルティの作り方

皆さんは、優れたノベルティと、そうでないノベルティの違いについて考えたことがあるでしょうか。

数々の企業ブランディングや広告プランニングを手掛けている三浦雄司さんは、優れたノベルティには、企業が伝えたい「メッセージ」 とそのメッセージを的確に伝えるための「ストーリー」が埋め込まれていると言います。
つまり、既製品にロゴやサービス名を印刷して配るだけでは、優れたノベルティとはいえないという考えです。

では、受け取った人の心をつかみ、将来のビジネスチャンスにもつながるノベルティを制作するには、どうしたらいいのでしょうか。
三浦さんに、渡す側、受け取る側の双方が納得できるノベルティの作り方を教えていただきました。

デジタルな時代だからこそ、ノベルティが心を動かす

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(三浦雄司さん 株式会社takibi アカウントプランナー。営業職を経て、2012年より現職。コンサルティングから広告クリエイティブまで企業ブランディング全般を手掛ける。「従来のノベルティからの脱却」をテーマにしたウェブサイト「ちゃんと考えるノベルティ」設立、運営を行う)

「ロゴやキャラクターの入ったアイテムが珍しかった時代には、タオルやカレンダーに名入れ印刷をして作るだけで喜ばれました。しかし、モノや情報があふれる現代において、普通のロゴ入りのペンやクリアファイルやタオルをもらっても受け取る側は既視感があり、大きく心は動きません。本来であれば広告媒体として大きな力があるのに、もったいないことだと思います」

三浦さんは、時代に合った優れたノベルティには共通した特性があると言います。

「印象に残るノベルティには、企業が伝えたいメッセージと、それを端的に伝えるストーリーがあります。その上で、受け取る側がほしいと思える機能や質感、デザイン性、自分では買わないけどもらったらうれしいモノ、驚きがあるモノなどの条件がそろっている。それが、今日的な優れたノベルティだと考えます」

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(三浦さんがノベルティ制作時に重要視している3つのポイント。 takibi運営サイト「ちゃんと考えるノベルティ」から )

しかし三浦さんは、これらの条件を満たしているノベルティは非常に少ないと感じています。

「たとえば辞書で"ノベルティ"と引くと、『原義は"珍しい事象や物"』とありますが、現実はありきたりなモノが多く、本来の意味を体現している、心を動かすノベルティは多くありません。おそらく宣伝・広報担当者など、ノベルティ制作に携わる多くの方々が、ノベルティと古くからある名入れの粗品を同じ役割と捉えているからではないでしょうか」

しかし、それはノベルティの可能性を低く見積もっていると、三浦さんは考えます。

「ネイティブアドのような広告がネットで生まれたように、これまで多くの企業がユーザーに自然に届く広告表現を模索してきました。デジタルのコミュニケーションが増えた今だからこそ、ノベルティというリアルなモノが企業の思いをストレートに伝えられる。広告媒体としては旧式で、あまり期待が持たれていませんが、今改めてノベルティに大きな可能性を感じています」

ここまでできるノベルティの可能性

よく考えられたノベルティには、企業からのメッセージを力強く伝える力があると言う三浦さん。過去に関わったノベルティのなかから、その可能性を感じさせてくれる具体例を紹介していただきました。

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(スケジュールつき木のマグネット(上)とメジャー(下)
クライアント:ハイアス・アンド・カンパニー株式会社(R+house))

解説:
ハイアス・アンド・カンパニーさんが手掛ける注文住宅ブランド「R+house」の「賢い家づくり勉強会」に来られる方のために制作したノベルティです。特に住宅購入の際に強い決定権を持つ奥様に喜んでいただくことを念頭に、質感に優れたウォルナットやチーク材を使用したマグネットとメジャーを制作しました。契約から施工までのスケジュールをイメージしていただくため、マグネットには簡易スケジュール表を同梱。また、家のサイズを自由に決められる注文住宅ならではの魅力を伝えるため、メジャーをセレクトしました。

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(メッセージを込めたゴミ袋
クライアント:株式会社マクロミル)

解説:
インターネット調査会社のマクロミルさんが、CI(コーポレート・アイデンティティー)リニューアルを行った際に制作したノベルティです。ロゴのタグライン(コピー)として採用された「Innovation or Nothing」というワードから「イノベーション(革新)は捨てることから始まる」というメッセージが生まれ、最終的には、大きく「過去」と印刷したゴミ袋を制作しました。このノベルティを実際にゴミ袋として使用されているのを目撃した一般の方が、「過去を捨てたいさぎよい人がいる」と写真をSNSでアップし、リツイートが2万回を超えるなど、大きな話題となりました。

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(端材で作る木のしおり
クライアント:株式会社グライダーアソシエイツ(antenna* ))

解説:
スマートフォン向けキュレーションアプリ「antenna* 」のリリース直後に制作したノベルティです。当時サービスの軸であった、お気に入りの記事を保存できる「クリップ機能」にフォーカスし、文庫本で使える木製のしおりを制作しました。木製のロゴやクリップ型をつなぐ紐やパーツの質感にもこだわっています。制作のきっかけは、端材(材料を型に沿って切り出した際に生じる余分な切れ端)を使うことで低コストでアイテムを作れるという木製アイテムを扱うメーカーさんからいただいたアイデア。素材が木の場合は、紙を型抜きする場合と違って、あらかじめ型を用意する必要がなく、 直接レーザーでカットできる。これはコストや時間の面でも大きな魅力でした。

アイテム選びより先にやるべきことがある

では、こうしたユニークなノベルティを制作にするには、何から始めればよいのでしょうか。三浦さんは、次のようなプロセスで取り組むべきだと言います。

<三浦さんが考える、理想的なノベルティ制作のプロセス>

1. 知る
新規事業のスタートやCIの見直し、株式上場など、広報やプロモーションを伴うイベントに備え、日頃から会社の方向性や経営者の考え方を把握する。ギフトなどの流行やトレンドのキャッチアップに努める。

2. 考える
広報・宣伝戦略の一環としてノベルティを作成することになったら、まずはユーザー像を設定。ノベルティに込めるメッセージやコンセプト、イメージ、ストーリーを固め、制作計画を練る。

3. 選ぶ
感覚ではなく、論理立てて「なぜ今、このノベルティを作るのか」を整理し、コンセプトに即したアイテムを選ぶ。

4. 作る
デザイナーや制作会社、素材メーカー、印刷会社、卸売会社などと協力して、素材や色、デザイン、コピーを煮詰め、イメージを形にする。

5. 配布する
完成したノベルティを、適切なタイミングや場所、手段でターゲットのもとへ届ける。

ポイントは、伝えたいメッセージやイメージなど、コンセプト固めを先行させ、アイテム選びは制作プロセスの最終段階に行うべきだということ。もしこの手法に意外性を感じるようなら要注意。三浦さんはその理由を次のように説明します。

「ノベルティグッズの販売サイトやカタログには、数万を超えるアイテムが掲載されています。選ぶだけでも多大な労力がかかるため、選び終えると一仕事終えた気がしてしまいます。しかし、メッセージを吟味することなく選んだアイテムが、本来の目的にかなっているのはまれなこと。後づけのコンセプトやストーリーで人々の心をつかむことは難しいはずです」

だからこそ、早い段階でメッセージやイメージ、ストーリーを固めることが大事なのだと三浦さんは力説します。

「アイテム」ありきでなく「伝えたいこと」から考える

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(takibi運営サイト「ちゃんと考えるノベルティ」から)

「ノベルティを配る目的や伝えたいメッセージがはっきりすれば、おのずと選択肢は絞られてきますから焦る必要はありません。ノベルティサイトやカタログを開くのは、方向性が固まってからで十分です」

イメージの実現に必要なのは「検索力」と「相談力」

「もし仮に、伝えたいメッセージに適したノベルティが既製品のなかから見つからなければ、一から作ってしまうという選択肢もある」と、三浦さんは言います。

「大事なのは、"検索力"と"相談力"です。イメージそのままのアイテムではなくても、類似商品を取り扱っているメーカーや工場、卸売会社や販売店は国内外に数多く存在します。インターネット検索や人づてで探し、電話やメールでアプローチすれば、たいてい親身になって相談に乗ってくれるはず。ためらうことなく協力を仰ぎましょう」

オリジナルのノベルティは、既製品と比べれば確かにコストも手間もかかりますが、1.5倍から2倍足らずのコスト増で済むことも多いそう。

「反響や話題性を考えれば、無難でありきたりなノベルティを作ってゴミ箱行きになってしまうより、よほどコストパフォーマンスに優れているといえます。もし、広告戦略において競合他社と明確な差別化を図りたいのではあれば、ぜひオリジナルのノベルティ作りにも挑戦していただきたいですね」

笑顔で語る三浦さん

もし、あなたが広報や宣伝業務に携わるなかで、閉塞(へいそく)感やマンネリ感を感じているなら、これを機にノベルティのあり方を見直してみるのはいかがでしょうか。

コンセプトを立て、それに沿ったクリエイティブによって、多くのステークホルダーに対して、適切なメッセージを伝えるのは、宣伝・広報担当者にとって基本中の基本。ユニークなノベルティを活用すれば、これまで届きにくかった思いを大切なユーザーに伝えられるかもしれません。

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