「会議室が足りない!」会議室を効率的に運用する三者三様の取り組み

打ち合わせで会議室を使おうと思ったら、どこも予約でいっぱい。出席者の予定を調整し、なんとか空いている部屋を確保できたものの、いざ当日になってみると他の会議室はなぜかガラガラ…。 会議スペース不足は企業で起こりがちな問題です。十分な数の部屋を用意して予約の仕組みも整えているのに、空室が足りないのは、中止や延期になった会議の予約をキャンセルし忘れた「カラ予約」が原因かもしれません。
カラ予約があふれて会議室が取りにくくなれば、「とりあえず空きを押さえておかねば」とさらに予約の数が増え、ますます空きがなくなってしまう…という悪循環に陥ります。社内から湧き上がる不満に頭を抱えている人もいるかもしれません。

ヤフーでも会議スペースについて同様の問題がありました。しかし、2016年10月に移転した紀尾井町の新オフィスでは、社員が専用の机を持たない「フリーアドレス」制度を導入。執務エリアの壁面の一部をホワイトボードにし、可動式のホワイトボードをあちこちに置くなど、そもそも会議室を予約することなく、その場で打ち合わせができる工夫を施しました。その結果、打ち合わせの仕方にも良い変化が生まれています。

今回は同様に、さまざまな方法で会議スペース不足を解決した企業を取材し、効率的な会議室運用のヒントを探りました。

カラ予約の「自動キャンセル」で、会議自体も効率化

地図情報サービス「いつもNAVI」などを展開する株式会社ゼンリンデータコムも、会議室のカラ予約に悩まされていました。
「社員から『会議室が空いていない』という苦情が多く届いていました。予定した会議が中止になった場合は、事前にキャンセルをするよう社内に周知はしていたのですが、なかなかカラ予約はなくなりませんでした」(ゼンリンデータコム総務 佐藤臣徳さん)

課題を解決すべく、ゼンリンデータコムが導入したのが、株式会社内田洋行のクラウド型会議室予約・運用サービス「SmartRooms(スマートルームズ)」です。「Microsoft Exchange(マイクロソフト エクスチェンジ)」「サイボウズ ガルーン」「G Suite」といったグループウェアで管理されている予約状況を、各部屋の入口に設置したタブレット端末で確認でき、入退室の管理も行えます。

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ゼンリンデータコムの会議室入口に設置されたタブレット端末(写真提供:株式会社 内田洋行)

タブレット端末には会議名や予約者の情報が表示され、「いつ、誰が使うのか」が一目でわかります。その場で予約や時間延長などの操作も可能です。なかでも、特にゼンリンデータコムで効果があった機能は、予約の「自動キャンセル」だったと佐藤さんは話します。

「開始時刻から10分を過ぎても入室がない場合は、自動で予約をキャンセルできるように設定しています。2015年1月の導入直後は約16%だった自動キャンセル率が、現在は約8%まで低減し、カラ予約の減少につながりました。さらに終了時刻10分前と1分前には、アラーム機能を使って時間内の退室を促しています。開始時刻と終了時刻が厳守されることで、会議の効率化にもつながりました」

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会議中は、画面に会議名や予約者の情報が表示される(写真提供:株式会社 内田洋行)

また「SmartRooms」には会議室の利用状況を分析できる機能もあり、利用実態の把握に役立ったと言います。

「利用者の意識を向上させるため、部門別の利用状況を社内会議で報告するようにしています。その結果、導入から現在までの約3年間で会議室全体の稼働率が58%から65%まで上昇しました。会議室が足りないと嘆くのではなく、限りある会議室を有効に利用しようという意識が、社員の間で広まっていると感じています」(佐藤さん)

「古民家」も会議室に。社外にある空きスペースを有効活用

会議室の数を増やしたいものの、スペースの都合上どうしてもかなわない。そんな場合は、貸会議室やコワーキングスペースなど、自社の「外部」にある会議スペースを一時的に利用するという選択肢もあります。

なかでも最近注目されているのが、空きスペースのマッチングサービス。株式会社スペースマーケットが運営する「スペースマーケット」では、イベント会場や撮影スタジオなどさまざまな空きスペースを1時間単位で貸し借りできます。近所の一室をレンタルすれば、臨時の会議室として使える、というわけです。

「以前は、スタートアップやITベンチャーの社員方が会議室として利用することが多かったのですが、最近では大手企業の利用も増えてきました。部署単位やチーム単位の会議に限らず、セミナー、面接、プレゼンなど用途もさまざまです。企業の幹部メンバーが集まって、経営会議を行うケースも見られますよ」(スペースマーケット 端山愛子さん)

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会議室として利用されているスペースの一例(写真提供:株式会社スペースマーケット)

スペースの予約や決済は、ウェブサイトまたはスマホアプリ上で完結。利用可能スペースは、現在全国に約9000件あり、エリアや予算、人数、設備などの条件で絞り込めます。用途に合わせてスペースを自由に選択できるのは、貸会議室ならではの大きなメリットといえるでしょう。

「昨年(2017年)は法人アカウント機能もリリースし、現在約350社が利用されています。当日予約できるスペースも多く、お客さまからは『簡単に予約や利用ができた』『急に会議室が必要になったときでも手配ができた』という声をいただいています」(端山さん)

スペースマーケットには会議室だけでなく、店舗や野球場、お寺、古民家といったさまざまなスペースが登録されています。中にはあえて「会議室以外の場所」で会議を行う企業もあるのだとか。

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古民家のスペースを利用して社内合宿を行う企業も(写真提供:株式会社スペースマーケット)

「古民家や、海の見えるスペースをよく『オフサイトミーティング』に活用していただいていますね。通常の会議とは別に、リラックスできる空間でじっくり議論を重ねて、意思決定やアイデア出しを行うのです。場所を変えることで日常業務から頭を切り離し、長期的な視点で議論ができるという利点があります」(端山さん)

さらには、キッチン付きのスペースを借りて、昼に会議を、夕方からは料理を作ってそのまま懇親会をする企業も増えてきているとか。チームの結束や生産性向上のために、「非日常」の空間を利用するのも効果的かもしれませんね。

会議室を廃止――オープンスペース化で使い方が多彩に

ここまで「今ある会議室を有効に使う」「社外のスペースを使う」という取り組みの事例をご紹介しましたが、思い切って「会議室そのものを使わない」という発想の転換を図った企業もあります。

総合人材サービス・パーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジー株式会社では、豊洲オフィスに約200席のオープンスペースを設けています。ほぼ全ての会議が「CREATIVE BASE」と呼ばれるオープンスペースで行われており、「会議室が空いていないから集まれない」ということがありません。

「『会議室の予約を取る』というタスクが消え、気軽にミーティングを行えるようになったことで、決定スピードが格段に向上しました。また、オープンな場で打ち合わせを行うことで、部署の垣根を越えたコミュニケーションを図ることができ、組織の活性化につながっています」(パーソルプロセス&テクノロジー 木村亜矢さん)

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打ち合わせは原則としてオープンスペースで行われる。一段高いエリアはカフェをイメージした「イノベーションカフェ」(写真提供:パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)

もちろんオープンスペースだからといって、全ての情報がオープンになるわけではありません。「CREATIVE BASE」は基本的に社員のみが利用し、来客時は「THE LOBBY」という来客専用のオープンスペースで応対しているそうです。経営会議など機密情報が含まれる場合のために、別途6つの会議室と面談専用のブースも備えています。
さらに「CREATIVE BASE」内は、社員の目的に応じてゾーンが分けられています。

「固定モニターが設置されたボックス型の『レストランスペース』や、フランクに親交を深めるための『コミュニケーションラウンジ』、非日常の空間を演出した『イノベーションカフェ』などを用意し、社員が自由に場所を選べるようにしています。また、プロジェクターやモニター等のレンタルも行っており、効率的な会議を後押ししています」(木村さん)

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「イノベーションカフェ」内部。カフェをイメージし、カラフルな椅子が並ぶ(写真提供:パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)

「CREATIVE BASE」は打ち合わせ以外にも社員の休憩スペースや勉強会、スポーツ観戦など、多彩な用途で使われているそうです。さらに、営業やコンサルティングチームの社員は自分のデスクを持たない「フリーアドレス制」にし、その日の気分に合わせて働く場所を選べるようにしています。文字通り「壁」を取り払うことで、会議室不足の解消に留まらない効果を生み出しています。

今回紹介した3つの事例は、どれも「会議室の数を単純に増やす」という解決方法ではありません。冒頭に挙げた「カラ予約」などの、運用上の問題を根本的に解決しなければ、会議室の数をやみくもに増やしても再び同じ事態が起こるでしょう。さらに、オフサイトミーティングやオープンスペースの活用など、会議そのもののあり方を見直すことも、「会議室不足」解決の糸口となりそうです。

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