アクセシビリティの取り組み「インクルーシブデザイン」の活用

パソコン、スマートフォンのイラスト

2017年11月11日(土)、アクセシビリティのイベント「Japan Accessibility Conference」を、ヤフー株式会社、株式会社サイバーエージェント、freee株式会社、サイボウズ株式会社の4社共同で開催しました。

「アクセシビリティ」というと、高齢者や障害者のための対応や、規格または実装の話と捉えられることが多いですが、UXデザインやインクルーシブデザインといったデザイン手法の実現度合いを測るものさしにもなります。
今回は、デザイン手法の一つ「インクルーシブデザイン」についてご紹介します。

近年いわれる「アクセシビリティ」とは、その名の通り「アクセスのしやすさ」ですが、ウェブサービスやアプリ開発の現場では「あらゆる環境や状態の人にとっての、情報に対するアクセスのしやすさの度合い」と捉えています。
具体的には高齢者や障害者でもウェブサービスやアプリを使えるようにすることです。

インクルーシブデザインとは

「インクルーシブ」つまり「包括的な」という言葉の通り、多様な人々をプロダクトやサービスの開発の、早い段階から巻き込んで行うデザイン手法です。
この手法では、高齢者や障害者、海外の方など、従来のデザインではフォーカスされにくい方たちに参加していただくことで、新たな気付きや着想を得たり、潜在的なニーズを掘り起こしたりできるといわれています。

「誰もが使えるものを作る」という「ユニバーサルデザイン」と似ている部分もありますが、ユニバーサルデザインはアウトプットに着目しているのに対し、インクルーシブデザインはプロセスに着目し、実際に利用状況を見ながら改善していくデザイン手法だといえます。

また、「参加型デザイン」で考えてみると、潜在的なニーズを掘り起こす部分やプロセスについては「デザイン思考」と似ている部分は多いと思います。ただ、平均的なユーザーを対象にしたデザイン思考はユーザーに寄り添ったアウトプットになりがちなのに対し、インクルーシブデザインでは着眼点の切り口が全く異なるアウトプットが期待できます。

そして、多様なユーザーによって検討・検証を行うことで、従来よりも変化に富んだ利用方法に耐えうるアウトプットも期待できます。それは結果的にアクセシビリティを高めることにもつながるため、インクルーシブデザインを行うことが、よりアクセシビリティの高いサービスやプロダクトを作るための手段になると私たちは考えています。

写真
(「Japan Accessibility Conference」の様子)

Yahoo! JAPANがインクルーシブデザインで実現したいこと

Yahoo! JAPANは、ウェブやアプリといった「情報技術を使って人々の課題を解決する」をミッションにしています。
ただ、実際には目の前のビジネス課題の解決、ビジネス目標にいかに近づくかという施策や改善に目がいきがちです。また、多様なユーザーに対して幅広く検討や設計を行うのではなく、サービスやアプリをいかに差別化できるかといった商業デザイン的な発想に陥いることが多いのが実情です。

利益と市場での優位性を追い求めることは、会社や事業を継続させるために必要かつ重要な条件です。一方で、そこに集中することで、掲げていたミッションからどんどんかけ離れていってしまう可能性もあるため、その間をつなぐ懸け橋として、インクルーシブデザインの手法を用いています。

本来の手法とは少し異なるのですが、インクルーシブデザインの手法を用いた非常に効果的な事例をご紹介します。
Yahoo! JAPANが提供するサービスやアプリを、全盲の方が音声読み上げ機能の「スクリーンリーダー」だけでどのように操作して情報を取得するのか、その様子をサービスの責任者・エンジニア・デザイナーなどに見てもらいました。(※)
(※)・[Room A] Japan Accessibility Conference vol.1 (4:35:00付近からデモを行っています)

イベントの様子

スクリーンリーダーはOSの機能として提供されている場合もあるので、利用しようと思えばすぐ使えるのですが、サービスの担当者が実際に利用したり、自分のサービスがどのように読み上げられるかを見たり知ったりする機会はなかなかない、というのが実情です。
そのため、実際に利用されている様子を見ることで、自分が想定していない利用方法でもサービスやアプリを利用できることをまず知ってもらいました。その上で、機能やUIによっては使えない場合があることを実感し、共感してもらいました。

特に「共感する」ことは重要です。当事者が困っていることをデータや文章で理解するだけで、その後の行動につなげるのはなかなか難しいです。しかし、実際に利用している状況を見て共感してもらうことで、より当事者意識を持ってサービス改善やアプリ改善につなげられると考えています。

イベントの様子

今回の「Japan Accessibility Conference」では、基調講演の「UX as science」というUXの非常に専門的なセッションから始まり、アクセシビリティーの導入について、実装技術、支援技術、規格、社内導入の事例といったさまざまな内容を、専門家の方々に話していただきました。
イベントの内容を通じて、インクルーシブデザインやアクセシビリティに興味を持っていただければと思います。

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