「仙台市東部沿岸地域復興アイデアソン」を開催

「仙台市東部沿岸地域復興アイデアソン」を開催

Yahoo! JAPANでは、先日6月21日、仙台市と復興庁の協力のもと、東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市東部沿岸地域の利活用について考えるアイデアソンを、東京で実施しました。
このアイデアソンは、現在Yahoo! JAPANから復興庁に出向中の高田が発起人となり、実現にいたりました。

発起人としてアイデアソンを運営した高田が、今回の実施にむけた経緯、また、当日の様子をご報告します。

ヤフー社員として初、今年4月より復興庁に出向

2016年4月よりYahoo! JAPANから復興庁に出向している高田です。
東日本大震災当時にYahoo! JAPANの全社的な震災対応でプロジェクトリーダーを務めていた経緯で、復興庁の政策調査官として任命されました。復興庁への社員の出向はYahoo! JAPANとしても初の試みですし、復興庁側としてもIT系人材の受け入れは初めてだそうです。

復興庁は、2011年から2021年までの10年間で東北の復興を成し遂げるという時限組織で、宮内庁以外の全ての省庁と、民間企業・自治体からの出向者で組織されています。組織全体が官民連携のタスクフォースのようなもの、と言えるかもしれません。

今回の出向は、中央省庁のなかに実際に民間企業であるYahoo! JAPANの社員が入り、民間からの視点やITを活用してのお手伝いができるというのはもちろん、個人的に東北の被災地における課題は近い将来日本の地方のどこででも直面する課題になるという危機意識があったこともあり、ぜひともとお引受けしました。

震災から5年、現地で感じた課題

復興庁に出向してすぐ、岩手、宮城、福島の被災三県を何度もまわりました。
そこで感じたのは、震災から5年がたち、ハード面のインフラ系の復興から、ソフト面の創生の段階に向かっているとはいえ、被災地域の「にぎわい」を取り戻すのはまだ難しい、ということです。

法律を作り、補助金を配るだけでは地域の活力は戻りませんし、インフラを復旧しただけで人が戻ってくるわけでもありません。
また、産業再生やコミュニティー再建は行政だけではできず、NPOや民間企業との連携が不可欠です。創生フェーズの復興は、まさに日本全体で取り組まなければいけない課題だ、ということを肌身で感じました。

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(復興庁への出向後に訪れた釜石市役所) 

今回のアイデアソンが生まれたきっかけ

そうした流れの中で、今回の仙台市のアイデアソンの案件の相談を受けました。

仙台市の東部沿岸地域(写真下)は、美しい砂浜と柔らかな曲線を描く海岸線が特徴で、海の幸と田畑の恵みをいかした半農半漁の集落が点在していました。
特に荒浜地区については、以前NHKで放送された「イナサがまた吹く日~風 寄せる集落に生きる~」という番組で当時の姿をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

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この東部沿岸地域が、東日本大震災の津波被害により、住宅の建築や宿泊ができない災害危険区域に指定されました。
その後、防災集団移転促進事業として、住民が転居したあとの跡地の多くを仙台市が買い取り、5地区分(約60ヘクタール)について、市民や民間事業者などに賃貸し、自由な発想力で使ってもらうための企画提案公募が開始されたのでした。

仙台市からこの案件について相談を受けたとき、まさに創生フェーズだからこそ生じた課題が多くあると感じました。
仙台市自らが「われわれだけではいいものができないから民間に広く任せたい」といったメッセージを出していることはかなり思い切った判断です。ただ、そうしたメッセージも、これまでにない取り組みであるがゆえに、なかなか一般には浸透せず、周知に苦労していました。そして、これからよいアイデアが集まったとしても、行政側にも、民間(企業、NPO)側にも、連携経験が少ないという課題がありました。

これからの地域づくりは、官民連携でなければいけないとわかっていても、行政側にも、民間側にも、共創するための経験が足りません。
特に、コラボレーションをする際にお互いの組織文化の壁をどう乗り越えるのかは大きな課題でした。

また、仙台市の方と話していくなかで、東部沿岸地域からの移転を余儀なくされた住民の方々も、この移転跡地が誰もいない場所になるのではなく、新しい価値を与えられて、多くの人が訪問してくれる場所になってほしいと願っていることをお聞きしました。

そこで、Yahoo! JAPAN主催のイベントにすることで、広く知ってもらえるのではないかと思い、また官民のコラボレーション経験の場数にもなるように、参加者全体の密な交流を通じて答えを模索する「アイデアソン」という形式でお手伝いをさせてもらうことにしました。

6月21日に東京都内で実施されたアイデアソン

そうして、「津波災害を受けた仙台市東部沿岸地域の利活用を考えるアイデアソン」が6月21日に東京・千代田区の中学校跡地の講堂「3331 Arts Chiyoda」を会場に実施されました。
この日は平日だったにもかかわらず、50名近くの参加者が集まりました。

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(アイデアソン参加者全員で記念写真)

参加者は、仙台出身で現在は首都圏に在住している方、仙台市でのビジネスに魅力を感じている方などバラエティー豊かで、年代も20代から60代までさまざまでした。

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(アイデアソン参加者グループの風景)

個人的に印象に残ったのは、冒頭の仙台市職員の方からのオリエンテーションです。
職員の方が、今回のアイデアソンで求めていることをご自身の言葉として熱く語ってくださりました。行政側として今回の案件に携わる理由や、市長の決意、住民の方々との交流、その経緯と思いを真摯(しんし)に語られていました。このオリエンテーションのおかげで、参加者全員の心に火が付いたのではないかと思っています。

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(仙台市職員による熱のこもったオリエンテーションの様子)

数時間によるグループでの議論をへて、最終的に9つの事業アイデアが発表されました。

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(白熱のアイデア発表タイム)

ARテーマパークや、ロボットユートピア、IT農業やスポーツ特区など、バラエティー豊かな案が出ましたが、仙台市の方が最優秀賞に選んだのは「水上マーケット」。

復興において、新しい建物、ハコモノを建てる、という発想をいったん捨て、運河を生かした水上マーケットを実現する、というアイデアでした。
水上マーケットに加えて、仙台湾沿いにある貞山運河の両岸に一定区画ごとに、アウトドア、サーフィン、バーベキュー&クッキング、マーケット、レストランなどを設け、船で自由に行き来しながら現地の方との交流が楽しめるというものです。

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(仙台市賞受賞のシーン)

仙台市の方いわく「どうしても地元目線で、5地区それぞれでの利活用に囚われていたが、運河を利用して各地区の特色をいかしながら一つの事業にまとめていけるという視点が目からウロコで衝撃を受けた」とのことでした。

また、今回のイベントの参加者の中には、首都圏に在住していながら事前に現地を視察した方々もいらっしゃいました。
この仙台市東部沿岸地域の問題を「自分事」として考えていただける方々が多く参加されたことで、さらにイベント全体の熱量があがっていったのだと思います。 

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(髙木毅復興大臣も視察に訪れ、参加者のプレゼンに熱心に聞き入っていました)

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(会場では現地の様子をドローンで撮影した映像も展示。参加者に自由に閲覧してもらいました) 

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(イベントが終わり、スタッフで記念撮影)

仙台市東部沿岸部利活用の案件は、一般公募の結果も踏まえ、2017年3月までにプランをまとめるそうです。

今回のアイデアソンの参加者からも「事業主として公募にエントリーしました」といううれしいご報告もいただきました。

2年後には沿岸部周辺の幹線道路などのインフラが完成して人の流れが活発になる予定だそうです。
今回のアイデアソン参加者にも呼びかけて、今後も仙台でワークショップを開いたり、できる限りのお手伝いをしていきたいと考えています。

今後、被災地の課題を解決していくためには


最近、「シビックテック」という言葉を多く聞くようになりました。「ITを活用しながら身のまわりの課題を自ら解決していこう」という考え方です。
私も少し前までは、そのままその考え方を受け売りしていたのですが、復興庁に入り、現場を訪れるなかで考えが変わってきました。

被災地の課題を解決していくには、ネットにつながっていない、または、ネットこれからもつながらないかもしれない世界も含めたアプローチが必要だと感じています。
デジタルで解決できる問題もありますが、それだけではなく、当事者それぞれのアナログな課題とつながることで、やっと解決の端緒にたどり着ける問題もあるのではないかと考えるようになりました。

復興庁では「現場第一主義」でどんどん被災地に出向くことが求められます。
IT業界から出向している私は、これからもこの両極を行き来しながら、自分なりに泥臭く汗をかいて「シビックテック」にアプローチしていきたいと思います。

【「仙台市東部沿岸地域の利活用を考えるアイデアソン」のイベント風景タイムラプス動画】