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CSR

2030年、SDGs達成に向けてヤフーは何ができるのか
報告:SDGsダイアログ2017

課題解決特集ダイアログ記事に参加したみなさんの写真。

2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、17目標・169ターゲットの達成に向けて、企業を主要な実施主体の一つに位置付け、課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを期待している。目標年である2030年までに、企業はどのようにSDGsに取り組み、企業価値を高めていけるのか。ヤフーはこのほど、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史(のりちか)氏、CSOネットワーク共同事業責任者の黒田かをり氏をゲストに招き、SDGsダイアログを実施した。

2017年5月に「ヤフーのCSRレポート2016年」の特集として公開した記事を再提出しています。

司会=森摂(オルタナ編集長)写真=福地波宇郎

出席者)
・蟹江憲史氏(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
・黒田かをり氏(一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事)
・西田修一(ヤフー株式会社執行役員コーポレートグループSR推進統括本部長)
・妹尾正仁(ヤフー株式会社コーポレートグループ SR推進統括本部 社会貢献事業本部 社会貢献推進室 兼 サービス開発室 室長)

PROFILE

顔写真:蟹江憲史

蟹江憲史
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
2001年慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程終了。北九州市立大学法学部助教授、東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授を経て、2015年から現職。現在は国連大学サスティナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、「持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議」委員などを務める。

顔写真:黒田かをり

黒田かをり
一般財団法人CSOネットワーク 事務局長・理事
民間企業勤務後、コロンビア大学ビジネススクール、日本経済経営研究所、米国民間非営利組織アジア財団の勤務を経て、2003年から国際協力・開発分野での市民社会組織のグローバルなネットワークを進める「CSO連絡会(現・CSOネットワーク)」に勤務。ISO26000策定の日本のNGOエキスパートを務める。

顔写真:西田修一

西田修一
ヤフー株式会社執行役員コーポレートグループSR推進統括本部長
2004年、ヤフーに入社。2006年から「Yahoo! JAPAN」トップページの責任者を務める。2013年に検索部門へ異動。東日本大震災の復興支援キャンペーン「Search for 3.11 検索は応援になる。」や検索で一年を振り返るイベント「Yahoo!検索大賞」を立ち上げる。2015年4月に検索事業本部長およびユニットマネージャーに就任。2017年4月から現職。

顔写真:妹尾正仁

妹尾正仁
ヤフー株式会社 コーポレートグループ SR推進統括本部 社会貢献事業本部 社会貢献推進室 兼 サービス開発室 室長
2009年法律事務所で弁護士を務める。2012年にヤフー株式会社入社。M&Aや経営戦略などに携わる。2015年から、社会貢献推進室の室長となる。2017年から社会貢献本部サービス開発室の室長も務める。

肩書、部署名は掲載時のものです。

SDGsと企業への期待

SDGsロゴ(日本語)一覧

SDGs(持続可能な開発目標)は、MDGs(ミレニアム開発目標)に続く形で、2015年9月に国連加盟国193カ国が全会一致で採択した行動計画。スローガンとして「No one left behind.(誰も置き去りにしない)」を掲げる。17目標・169ターゲットから成り、2030年までに目標を達成することを目指す。2017年9月の国連総会で、達成状況を図る230の指標(インディケーター)が採択される予定。

司会・森さんの写真

司会・森

――2015年9月に国連でSDGsが採択されました。企業はどのように向き合えば良いのでしょうか。

蟹江さんの写真

蟹江

国連は企業に対してSDGsへの貢献を求めていますが、法的拘束力はなく、企業の自主性に任されています。とはいえ、何もしなくて良いわけではありません。
SDGsは国際条約とは違って、「グローバル・ガバナンス」が特徴です。「バックキャスティング」の考え方で、まず2030年の目標を設定し、その目標から現在に戻る線を描いて、何ができるかを考える仕組みになっています。このアプローチによって、各国政府、企業、NPO/NGOといったさまざまなステークホルダーが連携しながら、目標達成に向けて進むことになります。
SDGsで問われるのは、「2030年に向けてどれだけ改善できたか」です。現状は悪くても、目標に向かって進んでいることを示していくことが重要です。

蟹江憲史の写真
黒田さんの写真

黒田

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名し、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の重要性が増すなかで、国内外の投資家はこうした動きに注目しています。
経済成長とSDGsの達成には、大きなギャップがあります。このギャップをうめる過程で、イノベーションが生まれる可能性があります。イノベーションは技術革新を意味するだけでなく、潜在的なリスクの軽減や新たなビジネス創出の機会につながります。
企業向けの行動指針「SDGコンパス」では、「アウトサイド・イン・アプローチ」の重要性を示しています。アウトサイド・イン・アプローチは、外部や社会の視点を持って、長期的な目標設定や経営判断を行うことです。ヤフーには、IT(情報技術)を軸にした社会課題の解決に期待しています。

SR推進本部の設置で課題解決を加速

司会・森さんの写真

司会・森

――2016年に実施したステークホルダー・ダイアログでは、「CSRの体系化」「CSRコミットメントの明確化」といった課題が出ましたが、2017年度からCSRの推進体制を刷新したそうですね。

ヤフー西田の写真

西田

2017年4月にSR推進統括本部を設置し、SR推進執行役員に就任しました。ヤフーはSR(社会的な責任)を大きく、「ユーザーに対する責任」(ユーザーファースト)と「社会に対する責任」(社会貢献)の2つに分けています。
SDGsは「誰も置き去りにしない」を掲げていますが、ヤフーでも「ユーザーファースト」の精神で、ユーザーの課題解決に取り組んできました。ユーザーの課題を可視化し、解決することが、社会の課題解決につながり、その結果としてヤフーの社会的な価値が高まると考えています。
昨年末にヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」で、100年続く会社をつくるために何が必要かをテーマにしたプレゼン大会がありました。私はヤフーの成長とは、経済的な拡大だけではなく、社会の幸福度を最大化させることだと捉えています。幸福度の最大化を目指す限り、100年先も続く企業になれると考えています。

西田修一の写真
蟹江さんの写真

蟹江

「100年先」を考えることは、まさにサステナビリティですね。また、社会がサステナブルでなければ、幸福度は高まりません。2050年に世界人口が90億人を超えるといわれるなかで、資源をこのまま使っていけば、社会も企業も持続「不」可能になってしまいます。いまから価値観の変化を起こす必要があります。

メディアの力で「知らせる」

蟹江さんの写真

蟹江

SDGsの課題として、一般的な認知度の低さがあります。「具体的に何をすれば良いのか分かりづらい」という声もよく聞きます。その点、メディアとして大きな影響力を持つYahoo!ニュースに期待しています。

黒田さんの写真

黒田

私も多くの方がYahoo!ニュースを見ているということで、メディアとしての役割が大きいと感じています。ヤフーの復興支援活動は素晴らしく、以前から注目していました。「3.11」の検索が寄付につながる事例もインパクトがありますね。

黒田かをりの写真
ヤフー西田の写真

西田

3月11日に「3.11」が検索されると、ヤフーが10円を復興支援活動に寄付する仕組みです。2014年にスタートしました。初年度の参加者は約260万人で、2017年は400万人を超えました。
2012年、2013年の3月11日は、東日本大震災を忘れないように、トップページを特別仕様にしていたのですが、検索が寄付になる「仕組み」を新たにつくったことで、共感してくれた人が参加し、さらにその輪を広げてくれるようになりました。

黒田さんの写真

黒田

私は、人はどうしたら社会貢献活動をするのかという研究をしているので、仕組みの大切さがよく分かります。
若い人を中心に、社会貢献したいと思う人が6割を超えています(内閣府「平成28年度 社会意識に関する世論調査」)。ですが、こうした流れはあっても、SDGsを達成するための行動になかなか結びつかないのです。
例えば、フードロス(食品廃棄)の問題がありますが、フランスでは2016年2月、「食品廃棄禁止法」が成立しました。売れ残りの食料を廃棄することが禁止され、その代わり、フードバンクなどに提供されます。メディアとして、フードロスの問題、フードバンクや家庭でできる取り組みなどを紹介することも、一つの貢献の在り方ではないでしょうか。

ヤフー西田の写真

西田

メディアとしての役割や責任を感じ、伝える力を自認していますが、一方で、どこまで一般ユーザーにSDGsを伝えていけば良いのでしょうか。

蟹江さんの写真

蟹江

SDGsの達成は、身近なことの積み重ねです。ですから、国民全体に「格差のない社会」や「誰も取り残さない世界を作っていこう」といったメッセージを伝えていくことはやはり必要だと思います。

ヤフー妹尾の写真

妹尾

複雑なものをシンプルに伝えるのは難しいことですが、メディアを通じて多くの人に知ってもらい、アクションを起こしてもらう仕組みをつくるのは、私たちにしかできないことだと考えています。
SDGsには17目標・169ターゲットがありますが、すべてを伝え、日本人1億2000万人に行動を起こしてもらうのは難しい。そうではなく、「2030年を見よう」「自分の子どもが大人になった時を見よう」といったシンプルなメッセージを発信して、未来を考えてもらうことが大切だと思いました。

黒田さんの写真

黒田

フィッシャーマンジャパンの取り組みは、目標14の「海の豊かさを守ろう」だけでなく、目標12の「つくる責任 つかう責任」にも関連しています。このように、消費者とSDGsをつなげる仕組みが増えていくと素晴らしいですね。

日本企業としてできること

ヤフー妹尾の写真

妹尾

ヤフーは「UPDATE JAPAN(情報技術で人々の生活と社会をアップデートする)」をビジョンに掲げ、国内向けに事業を展開しています。SDGsはグローバルな課題ですが、日本企業としてどのような視点で取り組んでいくのが良いのでしょうか。

妹尾正仁の写真
蟹江さんの写真

蟹江

目標1で掲げられている貧困の削減に関してですが、1.1は世界の絶対的貧困、1.2は各国が定義する貧困に取り組むことを求めています。ですから、日本の企業にとっても、日本の貧困問題は直接的に関係してくると思います。
一方、アフリカの飢餓の問題など深刻な課題に対しての国際協力も必要で、両方とも大事なのだと思います。
SDGsのなかには、各国の状況に合わせて達成を促す目標もあり、目標11の「レジリエント(強靭)なまちづくり」であれば、日本の場合、災害に強いまちづくりにつながっていきます。目標に合わせた解釈が必要です。

ヤフー妹尾の写真

妹尾

災害・復興支援には、これまで一番力を入れてきていると思います。東日本大震災の復興支援として自転車イベント「ツール・ド・東北」を開催しているほか、Yahoo!ネット募金やYahoo!基金を通じて災害・復興支援に取り組むNPOらを支援しています。
災害時には、国内でも、住まいがなくなったり、急激に貧困や飢餓に近い状態になったりするので、目標1の「貧困をなくそう」や目標2の「飢餓をゼロに」にも貢献していると考えています。

黒田さんの写真

黒田

日本の課題とSDGsの17目標をつなげて考えることも必要です。子どもの貧困や、格差拡大、ジェンダーの問題もありますが、日本で深刻なのは、地方の過疎化、少子高齢化。このままだと2030年までに人口減少が進んでしまうという危惧をいだいている町や村も少なくありません。
持続可能な地域づくりに向けてさまざまな取り組みが行われていますので、そこに多様なセクターや課題間をつなぐSDGsを共通言語として活用もできると思います。

司会・森さんの写真

司会・森

――目標8にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)がありますが、ヤフーは「働き方改革」を進めていますね。

ヤフー妹尾の写真

妹尾

「働き方改革」にも力を入れています。社員の働きがいの創出や幸福度だけではなく、企業にとっても人材の確保につながってきますし、企業が長く続くには人が活き活きと働ける環境が大切だと感じています。
4月には介護や育児をしている社員を対象に週休3日制を選べる制度をスタートしました。また月に5日、社員の好きな場所で働ける「どこでもオフィス」の利用も社内に浸透してきています。
今後は子どもや地球環境に関する取り組みをさらに進めていきたいです。

黒田さんの写真

黒田

災害・復興支援や働き方改革など、SDGs達成に向けて、すでにさまざまな取り組みを進められていますね。大きなポテンシャルを感じ、わくわくしています。政府も「働き方改革」に力を入れていますし、ぜひ期待したいところです。

蟹江さんの写真

蟹江

自分の行動がどのようにグローバル規模で影響するのかを可視化できれば、さらに面白くなりそうですね。

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